テレビの警察物の影響で、ずいぶん実態がゆがめられている。何しろテレビは40分で殺人事件がすべて解決するのだからインチキがまかり通る。本当は、もっと地味で、もっと格好悪い普通のまじめな人たちの毎日の活動が治安を支えている。
警視庁の見学手続きは結構面倒で、参加者全員の氏名、住所、年齢を事前に報告し、変更のつど連絡が必要。場所柄、理解できなくもないが、全て郵便でとは、何か理由があるのだろう。10時、集合地点から出発、日比谷公園を突っ切る近道でも寒さの中15分はかかる。外見はそれとなく威厳があるが入ると案外狭く、天井も低く、しかも複雑なつくり。なんだか大学の研究室みたいだ。これも、理由のあることだろうが、昔の城の中のようにがっちりしていて、災害には強いことが素人目にもわかる。
元気のいい、若い婦人警官が都内の中学生の団体と一緒に案内してくれた。初めにスライドでの説明。国会議事堂を知らない中学生がいて!。説明者が質問を個別に充てて回答を求めていたが、なんだか、答えに窮した中学生が気の毒だった。これは普通の企業訪問にはないことだ。警視庁のマスコット「ピイポ」君の意味は市民の警察の英語の略号。文字通り市民の警察たることこそが警察活動の基本だ。警察参考室は面白い。特に明治以来の古い資料は必見。これだけのものに江戸時代などの資料を加えて繁華街にでも置いたらずいぶん警察活動の良質なPRになるのにもったいないことだ。通信指令センターは生きた現場でさすがに緊張感がある。赤いランプは重要事件の110番とのこと。見てる間にも次々に赤ランプが点灯している。大変な仕事をしているとの印象を受け素直な感謝の気持ちになる。もっと訓練や、装備、組織、活動状況、予算を含む各種統計等、見せるべき内容があることと思うがこれが精いっぱいなのだろう。
ともかくも、あのビルに入っただけで、インチキテレビの悪影響を少し脱したことだろう。昼食は奮発して第一ホテルの世界のバイキング。どこが世界かわからなかったがともかく都心ではこの値段は納得するというバイキングだ。11人の予約席は早くから準備されていて従業員もさすがに気持ちいい接遇だ。
食後、宗谷を見に「ゆりかもめ」に乗る。当初はガラガラの乗り物だったが今や便利な交通手段として結構利用されている。初代の「宗谷」は見るからに小さい。こんな船でよくも南極まで出かけたとまず感心する。昭和の頃の人たちの強さを見るようだ。そもそも、海軍の船を終戦後引上げ船に改修し、海上保安庁がその後に燈台連絡船に使ったオンボロ船なのだ。でも、立派に務めを果たしてここに係留されている。一生懸命働いた昭和の人の定年後を見るようだ。蒸気機関車や船を見るといつも思うのだが、人間の姿に似ている。みんな見通しされているようで、語りかけているようで、愛おしい。小さな船員室は長い航海で、さぞ不便だったろう。この人たちのおかげで今がある。
コメントする