第9日('02.12.28) マウントクック南壁のフッカー谷へ

user-pic
0

【第9日】2002年12月28日(土) 快晴

NZ_08.JPG(記録担当 伊久枝)

マウントクック南壁の美しいフッカー谷ヘ、ハーミテージホテル泊

ホテル前集合(9:00-9:15発)――ホワイトホースヘル(キャンプ地)( 9:00-10:10発)――トイレタイム(12:00軽食-12:30発)――フッカー湖畔(12:50昼食-13:45発)――吊り橋(15:00小休止)――キャンプ地(15:45)――ケアポイント(16:05-16:35発)――ホテル(17:40着)

 起床時間には外も曇り空で、予報では天気は悪化するとのこと。8時の朝食後、外は青空。部屋から見えるマウントクックも姿を現している。神は我らに微笑んだ!

 ホテル前に集合、専用ガイドの加藤君がランチボックスを抱えて挨拶。サンドイッチ・水・果物・クッキー・フルーツゼリーと袋一杯のランチ袋をザックにつめて出発。

 丁寧な説明に足を止め草花を眺める。ルピナスはここでも悪く言われている。これを持ち込んだラツセル・ルービンにちなんで名づけられたと言われ、狼のように一つの場所からどんどんと群れを広げるからのようだ。

 茎のギリギリまで咲くため虫も寄ってこず、川の端迄広がって行くため魚も寄り付かない。植物界だけでなく動物界にまで影響を及ぼしバランスを崩してしまうため、除草の対象になる。ROC(環境庁)の人がローインパクトの除草剤を担いで、風がなく雨の降らないような日に一株一株スプレーする。こうした説明の間でも、周囲では小鳥の鳴声がよく聞こえている。

 雲一つない快晴に"あんまり雲がないのも面白くないんだよな"と賛沢なカメラマン達。それにしても素晴らしい展望。正面にクック、左右に稜線のきれいな山、開けた平原と文句の付けようがない場所に何度も感動する。30分程した時突然の遠雷のような物音、表層雪崩だ、爆発したような音と共に雪煙があがる。目の前なのだが見つけるのに苦労する。

 少し歩くと僅かに雲が浮かぶ。昨日見られなかったセフトン、フットストール、マドンナピークの連なりが全容を現している。今度は大砲のような音が谷に響き、皆立ち止まって眺める。滝のように落ちる雪崩。セフトンのピークから5キロ離れた所から見たのだが、スピードの割にはあまり緊迫感がない。氷河の雪崩は密度が濃いので時速100?300キロもあり、雪はせいぜい80キロとのこと。

 ゆったり歩いて、説明の都度止まるので、山に囲まれた美しい景色の中に浸っていられる幸せも満喫できた。

 トイレ休憩のキャンプ地には既にキャンプをしている人々が大勢いる。ここでも頻りに囀っている小烏たちが沢山いる。ただ、ミルフォードで聞いたベルバードの美しい鳴声はついに聞くことはなかった。あの透明な響きはこの岩山には似合わない。

 15分程で出発。車はここまでなので登り口近くに駐車している人に注意をする加藤君。門柱のようなところに寄付金箱がありトイレのぺーパー等の費用にあてているとのこと。

 少し歩くとマウントクックを背に三角形の遭難慰霊塔が建っている。1953年の国立公園法成立前に建てられたので (1913年3人が遭難)よしとされているが、現在は個人のものは一切認められない。

 まわりにはタラメアが多く、よろけて触るだけで痛い。燃えにくいので火囲いに使ったり、ロープを編んだり、香りがするのでブッシュに入る時の道標にしたり、香水として用いたり、根や花は食べたりと、痛いのを除けば勝れものの植物なのだそうだ。植物は、風が強く吹くため大きくなれず横広がりになる特徴がある。

 一つ目の吊橋の手前に南アルプスの展望台があり写真撮影。アイガー北壁と同じ大きさのハダロストン氷河は2000メートルあり、氷河の層(厚み)は100メートルというが周囲の大きさに誤魔化され、我々の目には10メートル位にしか見えない。

 侵食してきた氷河により出来たミュラー氷河湖には、堆積物を乗せている氷河も見える。温帯地帯にこのような氷河は他になく、ハーミテージから直線にして7キロの所に見ることが出来、かつ平地化されたモレーンの上を歩くことが出来るという好条件を備えた場所は世界的にも珍しいため人気がある。話の通り、立止まって説明を聞いている横を軽装で走っている人、お父さんに肩車された子供、簡単な靴で歩いている女学生、観光客の一団といったように我々の装傭とはほど遠い人達が行き交っていた。

 氷河の流れ出た勢いで大きな岩がスパッと切られた状態を見る。冷たい氷河期と暖かい氷河期があり、今は暖かい氷河期で溶けて崩れているらしい。熱心に自分の足をモレーンの中に突っ込んでまで氷河の侵食状態やモレーンの話をしてくれる。周囲のモレーン上にいくつかの植物を見ることが出来たが、100?400年かかってついた緑とのこと。

 第2の吊橋の手前は岩肌近くに道がつくられ、右手の崖に小さな花が咲いていた。エーデルワイスの葉のみを見る。この辺りで透明な羽根を持つイワセミがチチッと鳴いていた。次第に陽射しも強くなり、だんだんと着ている物を脱いでは日焼け止めクリームを塗る。小川の流れに沿つて休憩小屋がある。12時になつたが後20?30分で氷河湖に着くのでトイレ休憩とし、クッキーや果物をお腹に入れて景色を眺める。

 小川をすぎ暫らくすると木道が続いている。行き交う人々と挨拶をかわす。

 昼食場所はフッカー氷河湖畔。マウントクックを眼前にした小さな湖で、白鳥に似た氷河の断片が神秘的であった。湖に入り氷河の氷を取ってきた加藤君がコツフェルで暖かい飲物をサービスしてくれる、というので氷河を溶かすのかとポカンとしていたらザックから大きなペットボトルを取出した。後で触るためだったのに食事が済んだら消えてしまっていたのにはガッカリした。湖面の水切りを7つも飛ばした木暮さん、各自のポートレート撮影に余念のない和夫さん、食べたらすぐ立上がる習慣がついたきみ子さん...のどかな時が流れる。地図をひろげ山や花の説明。地球温暖化により100メートル位の氷河が溶けているため、山の高さもかってとは異なるという。 観光客で少しざわついてきた頃、帰路につく。

 同じ道を歩くのだがマウントクックを前方に見るのと、うしろにして歩くのでは風景も変り、新しい道を歩いている気分である。クックの南面は丁度ヒゲのおじいさんの顔のようで、鼻の辺りが朝と違う感じがするなどと言っていたら、氷河が溶けて形が少しづっ変わっているとのこと。目にしているマウントクックのピークは第2で、右奥の束面にNo.1のピークがある。侵食地形を見ながら歩くと山の大きさがよくわかる。

 ゆっくりと下山し最後の吊橋の手前で小休止をとる。風の強く吹く吊橋を渡りキャンプ場で別動隊は他の道を歩きだす。

 ケアポイントヘは20分弱、ガレた緩やかな坂道を歩くと、突然前方に氷河に削り取られた岩肌がむき出しの山やモレーンの大山が見えてきた。静かな野原のような展望の場所。セフトンがいつまでもきれいに輝いている。8人では勿体ないと言いながら30分弱の休憩の後、同じ道を帰る。ケアポイントと名がつくのだから、かつてここにはケアが沢山いたのであろうか?

 あきらさんはトツプを走るような勢いで下りていく、後を追う邦子さん、少し遅れて夏子さんと一列になっている様を見て、遅れ組5人は名残を借しんでゆっくり降りようと負け惜しみを隠してニヤリとする。ホテルから10分位の開けた場所でザックをおろし、草叢に寝転ぶ。高原の爽やかな風を身体いっぱいに受けながら"こうして何時間でも眺めていたいわね"といいながら30?40分位で名残を借しみつつホテルに向かう。

 夕食はラストの山歩きが無事終わったことと快晴であったことで大乾杯!!

 昨夕果たせなかった南十字星観賞は23時集合となり、各自明日の早立ちの準備にとりかかる。機内持込みの荷物と、預け荷物に振り分けたり、トランクに無理矢理押し込めるお土産が痛まないように気を付けたりと結構忙しい。

 仮眠の人の部屋に電話を入れたりして23時全員で前庭に出て星空を楽しむ。南十字星が逆さに見えるので見付けられない人、思い描いていたのと異なり感激が少なかった人などいたが、人工衛星・流れ星・天の川・スバル・オリオンと普段見られない星々の輝く天空に目をこらした一夜だった。みな満足して床に就く。

今日、観察した植物

  • マタゴウリ(クロウメモドキ)(p.26)
  • マオリ・オニオン(p.56)
  • オダマキ
  • ジキタリス
  • タラメア
  • ラージマウンテン・デイジー(p.48)
  • フィヨルドランド・ロック・デイジー(p.48)
  • ヒービー(p.42)
  • マウントクック・リリー(p.54)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://kenhai2100.com/cp-bin/mt/mt-tb.cgi/427

コメントする

このブログ記事について

このページは、akirafが2003年1月 6日 02:54に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「第10日('02.12.29) マウントクックからクライストチャーチ経由オークランドへ」です。

次のブログ記事は「第8日('02.12.27) クイーンズタウンからマウントクックへバスで移動」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。