ツール・ド・モンブランと言うのはご存知の方も多いと思う。一週間程かけて山小屋に泊まりながらモンブランを眺めながら周遊するトレックのことである。しかし、ウルトラトレールというのは、最近のエクストリーム志向に拍車がかかって、全行程166kmを約2日間で駆け巡ろうと言うのである。
なんと標高差は9,404m!海抜0mからエヴェレストを登るよりももっと登るということだ。ノースフェースがスポンサーで、世界各国から優秀なトレールランナーがやってくる。今年は、日本人の活躍が目覚しく、10位以内に3名も入賞した。3位に入賞した鏑木つよしさんは、今年40歳。なんと、去年本職だった県庁の仕事をやめて、プロのトレールランナーになったという情熱的な生き方をしている人で、NHKが「人間ドキュメンタリー」という番組で追っている人物だった。
まあ、そういうわけで、日本からは走るカメラマン達(ランニングカメラマン)を含む20名近くのスタッフがこの大会の取材のために渡欧して来た。事前にロケハンをして、ランナーといい景色が一体化する場所を探し、毎日ミーティングが持たれ綿密な時間構成がしかれ、何時にどこから、どのカメラマンをピックアップして、何時にどこに移動で、その後、イタリア側に移動して、ヘリコプターで下りて来たカメラマンをスイス側の峠へ連れて行き・・・・・・と、夜通しで2日間働きずめである。30分もあったら、車の中で目覚ましをかけて仮眠状態。ゆっくりレストランで食事をするような時間などなく、行動食として買い込んでいたバナナをかじる程度であった。ところどころで、夜通しで松明をもった応援の人たちがヘッドランプを光らせながら走ってくるランナーを待っていてお祭り騒ぎである。
上位のエリートランナー達は20時間前後でゴールに入る。本当に同じ人間だろうか??と信じられなくなる。このレースの最終タイムリミットは48時間で、それ以上かかってしまうと失格となる。最終日、シャモニーの教会前のゴールで撮影していた私たちは、フラフラになってに辿り着き、右手で自分の胸の前で十字架を切り、片膝を折って神に感謝し涙をためてゴールラインを越えていくランナーを見て、何度もらい泣きした事か・・・。 感極まり、感動、感動の連続であった。 『どうして、そこまでして走るんだろう・・・・・?』 私も、『どうして、そこまでして山に登るの?』と質問された事が何度かあるが、自分への挑戦なのである!全身全霊かけて燃え尽きるような生き方をしたい! 今回はランナーをはじめ、NHKのディレクター、カメラマン、各分野の第一線で活躍する人たちとの出会いがあり、刺激になるいい仕事であった。
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