オート・ルート第0日:本日顔合わせ

user-pic
0

SN33HR0_1.JPG 【2009年4月4日 快晴】

 各メンバーと、高山ガイドとの顔合わせを兼ねてバレー・ブロンシュといわれる(3800mから20kmを滑走する)氷河スキーをする事になった。エギュイ・デゥ・ミディのロープウェイ乗り場前で皆に対面した。皆さわやかな笑顔!すぐに昔から知っている山仲間のような空気がお互いの心の中に流れこんだようだった。

 シャモニーの高山ガイドと言うと、日焼けして刻み込まれた目尻のしわ、彫りの深い顔に、彼らの体から湧き出ている逞しいオーラでどんな女性もポーッとなってしまうくらいカッコイイ男が多いのだが、今回の私達のガイド、フィリップ・ジェニンはちょっと違うオーラの色を発しているように感じた。それもそのはず、オートルート中親しくなったのでわかったことだが、彼は42歳。愛妻との間に3歳と5歳の子供がいて、ガイドの仕事だけでは食べていけないので、仕事のない時期は夜ホテルのバーでピアノを弾いて歌っているプロのミュージシャンだという。山の上でも小屋の中でもよく歌い、よく笑い、結果的には彼は私達のチームにこれ以上ないくらいぴったり息の合ったガイドだったように思う。

 さて、バレー・ブロンシュ滑走。快晴無風、雪のコンディションもいい。上級・中級・下級コースがあり、私達は中級コースをいく。

 ヒマラヤンクライマーらしく、目の周囲以外は真っ黒に日焼けしている"カズヤ"こと、平出和也は山岳スキーレースの経験豊富で、カメラと、ビデオカメラ持参で眼前に広がるグランドジョラスなどの数々の名峰、20kmにも及ぶ氷河、今にもくづれて来そうなセラック地帯を慎重に滑走するメンバーを撮影しながら余裕の滑り。170cmくらいだろうか、とても体が締まっているせいか、線が細い。ヒマラヤの8000m峰を次々に登り偉業をなしているような威圧感など全く感じさせない、謙虚ですぐに親近感がわくような青年だ。

 152cmと小柄ながらしっかりと存在感がある"タカヨ"こと、岡村貴代はシャモニーに着てからフランス山岳会に入り本格的にあちこち登り始めたと言うことで、彼女の顔はすでに真っ黒であった。また、山岳マラソンに挑戦し22時間走り続けたこともあるくらい耐久力のある強い女性だ。いつも笑顔でどんな斜面も難なく滑り降りていく。追って私、アラン、そして"トシ"こと田中さんも皆いいリズムで続く。

 実際の話、この日は今回のオートルートのメンバーがどんな人達かをお互いにチェックする日であった。ひと滑りした後、すぐにガイドのフィリップに目をつけられてしまったのが、"カツ"こと72歳の白鳥さん。日本から飛行機での長旅と時差のせいで疲れが出ていることもあろうが、滑走の速度がおそく、急斜面のオフピストを滑り降りるのにかなり苦労している様子である。1500mほどの高度差を滑った後、軽くランチを取って、今度はマテリアルチェックを兼ねて、シールをつけて登りの練習を少しすることになった。ここでも、ガイドは"カツ、のろいぞー""カツ、コンヴァージョンはこうするんだ"、"カツ、水分は取っているのか?"と、かなり集中的に白鳥さんの様子を見ていた。結局、カツはフィリップの今日のテストにパスできなかったようで、オートルートには連れて行けないという判断をされてしまったらしい。スキーが上級であれば、登りが遅くても可能性はあるが、彼の場合はスキーレベル、登りの速度、コンヴァーションの技術等オートルートに連れて行けるレベルに満たないと言う理由からであった。しかし、それを見かねた神田さんがガイドに一日目だけトライしてくれと依頼してくれたおかげで、カツには事情を知らせないまま、翌日彼も一緒に出発することになった。『日本人ならではの思いやりだなぁ・・・。神田さん、ありがとう!』

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://kenhai2100.com/cp-bin/mt/mt-tb.cgi/288

コメントする