No.381早春の南。西。伊豆半島ハイキング旅行。(2019.3.6~2019.3.8)

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伊豆の南と西海岸は不便、その分知らない絶景や、忘れられた集落に出会う。山は簡単DSCN1870a.JPGハイキングに徹し旅行中心。二俣川から車で訪れる温暖の伊豆へ。
日時;2019年3月6日(水)~7日(木)~8日(金) 2泊3日。
参加者;勝巳(リーダー、記録文責)。才美、憲治(サブリーダー、会計、車)。貞 子。達也(会計、記録)。茂子。吉生(サブリーダー、写真、車)。邦子。幸子。合計 9人(男4.女5人)

【1日目】
南伊豆も久しぶりに尋ねると様変わりし、道は幅広くなりトンネルが増え何となく垢抜けしコザパリしてる。下田の「道の駅」など入場無料と思えない豪華さだ。海は震災の後の護岸工事の為か、かっての西伊豆の鄙びた漁村とは違う。砂浜は、防潮堤で囲DSCN1850a (2).JPGまれ、漁港は堰堤に守れて白砂青松の日本昔話の風景はない。当然だが安全の為に風景を失ったのだろう。でも、山は隆起地形独特の複雑性を帯び、どこも「金山」と思しき激しい外観だ。照葉樹林の樹相は登山道をはずれると厄介な森林密生にぶつかり低山でも歩行は困難。
こんな地形からか相変わらず伊豆は猪の跋こする世界だ。
河津桜の見事なパンフレットにつられた。桜の観光地はどこも同じだが修正している為か写真の風景は何処にもない。もちろん天気も、開花状況も、撮影時間も違えば同じような最高の瞬間に出くわすことは至難だが。やっぱり露天立ち並び、人混みを歩く有名なDSCN1850a (1).JPG観光地での花見には限界がある。名も知れない村で誰にも見られずに咲く満開の桜に偶然出会う贅沢な感動はおしむらくは河津にはない。
下田爪木崎の水仙は終わっているに違いないので須崎半島突端にある「恵比寿島」を歩いた。一周しても400mの島だが流石に太平洋に永く洗われ続けた様相は一見に値する。火山灰の絶壁や海底火山の様相もあるがいつごろのどこの噴火の結果なのか知らない。
たぶん伊豆半島が洋上遥かから流れ着いた太古の事だろうが。不確かだから確認したほうがいいが伊豆半島は現在も火山同士が追突している世界に唯一の火山弧(プレートのぶつかり合いで出来る火山島どうしDSCN1860a.JPGのせめぎ合い)興味あればこの島は格別の意味を持つだろう。
「タライ岬遊歩道」は田牛(こうじ)に行けば何とかなるだろうと細い海岸沿いの道に入り込む。手掘りのトンネルを超えれば駐車スペースがあることはわかっていたが、途中で出会った田牛の漁師に、「ここからさきはなにもない」「雨で道が荒れている」とにべもなく言われ、すごすごと引き返し、今日の宿舎側からタライ岬を目指。若いときはそんなことを言われれば勇んで入り込んだが今は違うのだと自分に言い聞かせる。国民宿舎は駐車場が満杯状態。桜につられて出かけてきたのだろう。タライ岬へは、此処から弓ヶ浜の松林を抜けて1時間もしないところだが、20分程度歩いた静かな浜辺で大休止。ここから先の急な階段を見て今回はここまでと全員一致。ゆったりした海鳴りの音、海は晴れて風もなく、遠くの大きな船は動いているのかどうかわからない。今日はこれから宿に帰り温泉に入ってのんびりしよう。夜空に星は見えるかどうか。

【2日目】
DSCN1934.JPG「石廊崎」は案外訪れない。西伊豆にはほかに多くの行きたいところがあっていつも素通りで先を急いでしまう。台風や天気予報でおなじみの所でなんといっても伊豆半島の先端。山羊は高い所に登ると言うが人間だって先端にはいきたい。行き止まりには何かあるように思えてならない。この先は何もないはずがないように思えるから不思議だ。人類発祥のアフリカの大地溝帯から1万年の旅をして南米チリの行き止まりに至る行動は、今の私達にめんめんとDNAを引き継いでいる。工事中の立派な駐車場を過ぎると細い燈台への道に続く。急な石段を下に思わぬところに小さな神社がある。どう見てもありがたみのなさそうな近所の人のいいおじさん風の神主姿の番人がいるので有料かと思いきや、これがただ。先端はまさに絶壁で足元は無いレベDSCN1923.JPGル。荒々しい小島が点在する勇壮な風景が太平洋に続く。黒潮にのってか風は出てきて傘はさせないが思い出したように小雨は降っている。波は高く岩に砕け遠く天地に遠雷を思わせる。白い波頭が傲然と黒い絶壁に永遠に挑み続ける。ただそれだけでその繰り返し。身もふたもない風景だが、これから何を学び取るのか。弘法大師なら、室戸岬の洞窟にこもり海に向かって悟りを開くだろうに。珍しく普段神仏に無関心とおぼしき人が安産のお札を買った。この光景が本人を悟らせ、まだ見ぬ孫にそうさせたに違いない。弘法大師に匹敵する立派な悟りだ。
「妻良」(めら)の港は人がいない。波もなく静かに山に囲まれ小さな漁村が横たわり、背景の森は黒々と一寸の隙も見せない。かっては白い砂浜にゆったり波が寄せて弧舟が傾いて引き上げられていた浜には高いコンクリートの堤防が建っていた。風景もかわり小さな人間の一生も変わるがそんなことにかかわりなく、ここの風景の奥には悠久の時間は流れる。その研ぎ澄まされた計算など受け付けない悠然とした力を感じる。
「波勝崎」のサルは700円出さないと見せてくれない。いまどき野猿を有料で見せる神経はかなりなもの。そのうちノラ猫も有料にするかもしれない。もちろん野猿センターの大駐車場は全くの空。我々の車だけ。どうせ何人に見せてもコストがかさむものではないのだから「今日は誰も居ないから半額」などと言えばいいのに一人700円を繰り返す。俺だったら半額にして入場させる、とか、国道からの入り口に本日割引デーの看板を出すとか結構入場しない割には車の中で楽しんでいる。かって台風で崩壊した雲見への山道を歩いた入り口がこの波勝崎に見えたがあの無謀な山行を懐かしく思い出す。
DSCN1933.JPG「雲見」は変な形の岩山と言うか巨大な岩の塊とその地名の雄大さが売りだろう。温泉も出て民宿も多く夏などかなり混んでいるようだ。ここから松崎を経て下田への途中に大沢温泉があるがそこを拠点に長九郎山に健ハイで登った。要はここまで来ると高い山が出てきて伊豆半島の先端が終わる。道はやがて西伊豆随一の街「松崎」に至り昼食となる。所構わず飛び込んだ食堂で「噂のカツカレー」の文字に引かれて注文。カツが本物でこれなら噂されるだろう。西伊豆の素朴な真面目さはこの辺りには未だ残っている。ここまでの道沿いに白ペンキの彫刻が点在しているが、古い洋品店の埃だらけのマネキンなみ。なんで放置されているのか昔からの七不思議だ。
観光化の進んだ堂ヶ島は避けて少し先の「田子」で「燈明ケ崎遊歩道」に向かう。この入り口がわかりにくく苦労して行き過ぎて戻る。目指した浮島温泉はパンフレットにあるが最新のカーナビにも出ない。そのはずだ、ただの町営日帰り湯。車の通る道が心細くなり古い造船所辺りから歩く。此の造船所はうっかりすると巨大な不法投棄のゴミ集積場に間違える。やがて行き止まりの民宿のある広場に。遊歩道はここから登るが一汗して小高い丘の東屋に出ると眼前に大きな海が突然現れる。目の前には堂ヶ島の三角の島がいくつか点在している。無人島には海鳥もたくさんいるようだ。風もなく、すっかり青空。かなたに富士山。今回の旅で久しぶりの徒歩。気分がいい。国道を少し外せばまだ「西伊豆」は残っている。
「安良里」は寂れた漁村であるが綺麗に整備されていわゆる漁村の廃船や廃棄漁網の山などのある風景とは違っている。この辺りに有名な俳優のヨットが係留されていたが最近火災で燃えたようだ。妻良にしろ安良里にしろ耳慣れないがいい名前だ。なんだか日本離れしている。足摺岬のときも思ったが、此の地もきっと黒潮の関係で多くの遠国の海洋文化交流があったのかと楽しい思いを巡らせる。
なんだか恥ずかしい。「恋人岬」などとあけすけもなく言うのは我が心情に反し照れる。 何も本人がそこまで意識しなくてよいのにと言われればそれまでだが。長い木造階段を辿った先にその展望台があり鐘がぶら下がっている。一度紐を引くと大きな音で何度も鳴り響く。雄大な風景で静かなこともあって恥ずかしさも限度を超えるが途中で鐘の音を止められず横に立って注目を一身に集めてその責任を負う羽目になる。やたらに鐘を鳴らしてはいけない。無料でもと教訓を得る。
DSCN1945.JPG今日の宿は「宇久須」(うぐす)の漁師民宿。堂ヶ島と土肥のはさまれた無名の温泉。貸切状態。海はすぐ30?なため津波対策の為到着後直ちに周辺を歩き回り、いざという時の逃げ道を確認する。宿は料理が自慢と言うだけあってやたら魚料理が多い。量だけでなく種類も多彩だ。生ものは食べたい気持ちの半分も食べられないが、金目鯛等30?が並ぶとお手上げ。年を取って小食になったとばかりは言えない。確かに魚は旨い。久しぶりの新鮮さだ。小さいながらかけ流しの温泉もあって朝も入れる。布団が重いのにはまいった。終戦後の我が家を思い出した。それでも普通に泊まって9000円程度は安い。山に登るだけの目的なら雨露をしのげればいいと長年思っていたがヤットこの歳になって少しは旅行らしく豪華にと変化も出てきた。これは進歩か退廃か評価が分かれるところ。

【3日目】
DSCN1968.JPG快晴の漁村の朝は明るい日に満ちている。きりっとした朝の大気の中6時散歩に出る。すぐ横の防波堤に立つ。波が静かに押し寄せている。宇久須のバス停は明治の様相。木造のかなり大きな建物だが屋根や壁のその古さは国宝級。ふうてんの虎さんが寝そべっているあのバス亭だ。早朝の通学の生徒が始発バスに乗る。学校カバンや部活道具の大きな荷物によたよたとしながらバスに駆け込む。出発時間を過ぎているのにバスは皆が来るのを待っている。遅れた子は照れ笑い、運転手は知らぬ顔を、DSCN1991.JPG先に乗っている子は無関心を装う。やがて警笛を短く鳴らしてバスは出る。村に似合わない大きな図体の中古車のような東海バスがよたよたと去るとこの村はまた波の音と微かな小鳥の鳴き声の村に帰る。朝日が明るく誰もいない古びた路地をただ照らしている。この子たちの生涯を通じてこのバス停は心に残るだろう。
今日は2山頂に登る。かなり上まで車で行くので登ると言っても散歩級。老人ホームの団体も登頂可能だが一応山なのでその覚悟と装備で敬意を払う。車はいったん土肥町まで国道を北上し、東に曲がって土肥峠(船原峠)を目指す。そこからの西伊豆スカイラインは現金200円を取る。カードは使えない。集金の人件費より収入は少ないはずだがなぜか無料にはしない。あっという間に達磨山(981m)登り口の標高870mの駐車場に着く。その登高差111m。しかも芝生状態DSCN1977.JPGの背の低い笹原。稜線で展望は素晴らしい。風はない。全くの快晴。山頂近くから富士が雪を頂き大きく見える。途中鹿が楽しそうに飛び跳ねて行く。高く悠然とトンビが舞う。足元には鹿の足跡の残雪が残る。海越しに富士市の煙突が見える。陽が上がってあたたくなってきた。駿河湾を超えて富士がますます大きく迫る。甲斐の富士は力強いが駿河の富士は美しい。つくづくと日本一の富士に見入る。登ってきた駐車場に戻り、車で戸田峠に向かう。駐車場(790m)に車を止め今度は大きなアンテナのある「金冠山」816mへ。登ったというより知らぬ間に着いたように山頂へ。その差30m弱。だが展望は絶景としか言いようがない。沼津の街や沼津アルプスを越えて、更に愛鷹山塊を従えて富士が堂々の姿を展開する。なんという景色だ。海の濃紺と、春浅き真白き富士は実によく似合う。富士には月見草がよく似合うと言った人は、この景色を知らなかったに違いない。駐車場から修善寺に曲がりくねった道を下り、下り切った真正面の蕎麦屋に入る。「元祖、禅寺そば。なな番」着いたときは空席があったのにあっという間に混んできた。人気のある店の様だ。旨くて量もあり、しかも安い。目新しいメニューと盛り付けが楽しい。わさびなどほんの少しの工夫なのだが。これでは繁盛する。蕎麦の名前のいわれと修禅寺との関係はかなり無理な解説だが微笑ましい。いつも思うのだが、この程度の工夫で商売繁盛するなら、他の蕎麦屋も少しは工夫すればいい。二俣川そばとか、大池公園そばとかありそうなものだがみんな「もりそば」などと平たく横並びだ。
DSCN1983.JPG道路がよくなったのには驚いた。修善寺から東名まではほとんどができたての高速道。以前は狩野川沿いに埃立つジャリ道にたまに車が通るだけだったのに。(60年も前で比較するのがおかしいのだがつい。)足柄SAに向かう途中、丹沢山が雪をかぶりアルプスの様相でこの3日間の旅を祝福してくれている。
皆、車中は歳相応に寂しいくらいに静かになった。それにしても、運転を担当してくれた憲治さん、吉生さん両氏は疲れたことだろう。すっかりお世話になった。

コース (行動記録の時間など主要部分は達也さんの正確な記録による。)

  • 第1日 3月6日(水)徒歩合計3時間 曇り時々小雨。
      集合  相鉄線二俣川農協裏(いつもの集合場所)6時30分。
      憲治、吉生氏車両2台分乗出発。
      6時40分二俣川発――海老名SA、小田原厚木道路経由――熱海着7時50分――城ケ崎海岸9時10分(門脇吊り橋散策)――河津11時10分(お花見散策)――下田道の駅、周辺昼食12時30分――下田須崎、爪木崎(恵比寿島一周)13時30分――南伊豆、下賀茂(菜の花畑)散策14時50分――田牛(とうじ)港行き止まり(タライ遊歩道入り口)15時25分――国民休暇村駐車場(タライ岬途中までの散策)15時25分――休暇村帰着16時20分(宿泊)――18時夕食バイキング個室――20時終了。
      宿泊 休暇村「南伊豆」0558-62-0535 静岡県賀茂郡南伊豆町湊 13100円/一人 6階。
      3人部屋(幸子。邦子。)×1室。2人部屋(憲治、貞子。勝巳、才美。達也、茂子。吉生。)×4室 計5室9人分。
      食事は同じ休暇村でも「嬬恋鹿沢」の方が旨いし工夫している。客がだっていても来るところの違いだろう。

    第2日 3月7日(木)徒歩合計4時間 小雨、後晴れ曇り。暖か

      宿発9時――伊豆半島南端石廊崎参道(最先端燈台周遊)、9時10分――妻良港立ち寄り10時55分――波勝崎立ち寄り11時30分――石部の棚田11時50分――雲見――彫刻ライン――松崎町(昼食)12時40分――堂ヶ島――田子((燈明ケ崎遊歩道、断崖のハイキング)13時50分――安良里――賀茂村恋人岬16時――宿泊着16時45分。
      宿泊 四季の里「まきば」0558-55-0622  1万円/一人(居山氏)静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須245-1 一日6組限定の小さな宿。
      魚料理の隠れた温泉漁師民宿 外観より実質。トイレ等設備は良好。部屋割りは前日と同じ5室9人分。

    第3日 3月8日(金)徒歩合計3時間 快晴 暖か

      7時朝食――宿発8時――土肥峠8時40分――達磨山登山口880m駐車場8時50分―― 達磨山981m山頂9時30分――登山口駐車場戻り9時50分――戸田峠駐車場10時――金冠山818m山頂10時30分――戸田峠駐車場帰着11時――修善寺11時30分――修善寺昼食(元祖禅寺そば。なな番)12時――東名高速足柄SA13時(解散13時30分――二俣川16時。

  • 持ち物;雨具。杖。簡易昼食兼非常食。非常用品(医薬品。懐中電灯等)。水筒。
  • 費用;宿泊+車両実費等計3万円位(昼食、特別料理代含む)。

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