No.367変な鉄道に乗るだけの旅 (2017.11.8)

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PB080004x.JPG実施日;2017年11月8日(水)
集合;6時50分 横浜駅東口バスターミナル(そごう側)18番乗り場(Cレーン)
参加者;8名(男4名、女5名)。勝巳、才美、憲治、貞子、吉生、三貴也、邦子、ゲスト1名。

コース
バス横浜バスターミナル出発7時05分(小湊鉄道バス 043-261-5131)。切符1650円。
五井――大原までの小湊鉄道、いすみ鉄道、通しの房総横断記念乗車券1700円。
五井発9時09分小湊鉄道――上総中野駅着10時20分(10時43分発いずみ鉄道)――大原着11時36分(肉屋の食堂昼食。JR大原――木更津間の切符1490円)。
JR大原発12時23分――安房鴨川着13時09分乗り換え(13時15分発)――館山着13時58分乗り換え(休憩後14時38分発)――君津着15時34分乗り換え(15時38分発)――木更津着15時45分――(高速バス乗り換え東口8番乗り場)木更津発16時20分(日東交通バス(0438-23-0151)全員分の回数券を案内所で購入。通常料金1550円)回数券1万円で合計11750円分――横浜着17時22分(解散)。
聞いたことのある鉄道だが初めて乗る。房総半島を東西に横断するにはこのほかに久留里線があるがこれとても途中まで、あとは歩き。だがこのルートだと「小湊鉄道」と「いすみ線」を組み合わせれば、全部鉄道で東京湾から太平洋までの魅力ある旅ができる。しかも横浜発のバスで小湊鉄道始発の五井まで直行と便利。
検討段階でちば周遊フリーパスを利用しようとしたがこれがしたたかに利用しずらくなんでこんなものが観光商品かと恨みも言いたくなる。たぶんJR千葉鉄道管理局の独自商品でJR本体の力に負けた結果だろう。バスの遅延状況も確認しそれに基づき出発時間を変更、その都度周知し最終版の確認などを経てやっと出発にこぎつける。
PB080011x.JPG五井での小湊鉄道の乗り口はバスを降りて、JRの五井駅改札口を入ってから構内で切符を買って入るという変則。切符は通して「いすみ鉄道」終点の大原まで買えるが、屋台の店のようなところでキップを売ってる駅員らしからぬお婆さんは結構規則に厳密で発車5分前になるまで売らない、流石に創立100年の鉄道の始発駅。駅舎はこれから乗る鉄道の先が思いやられるほど古く寂れて車庫かと見間違える。がらんとしたホームは風通しがやたらよい。とっくにホームに待ってドアを開けている列車に乗る。列車は黄色と赤の薄汚れた懐かしいジーゼルの昔の3等車。鉄道マニヤ風が数名。
ここからがすごい。五井と上総中野間39Kmの22駅が国の有形文化財に2017年に全部登録されているのだ。そのうち10施設が駅舎。もともとは房総半島を縦貫して安房小湊誕生寺へ行くためのお参り鉄道。建設に当たってはもとより資金不足で苦労したが、それでも昭和3年に何とか上総中野まで開通、現在に至る歴史を持つ。
PB080020x.JPG歴史的と言えば「タブレット」と言う丸い輪を利用して一定区間に列車がダブって入らないようにする誠に原始的だが確実な安全対策方法を取っているのはおそらく国内でここだけ。何しろ鉄道敷設に資金提供した株券は周辺住民の宝として鉄道同様にいまだに大切にされているという土地柄。皆で守っていることは間違いないが、押し寄せる近代化には乗り遅れ、一周した時の流れに幸いし先端に立ったために文化財の価値が出てきたようで微笑ましい。駅は北海道の原野にある懐かしい駅舎に、高倉健がホームに立っているような風貌さえある。
先頭車両の先頭に席を占める。窓から手を出せば森林に触れそうに走ることが多い。PB080016x.JPG走りだすとなんと隙間風が寒い。もちろん窓は閉めているから、明らかに建てつけが悪くて入る隙間風。鉄道ではこれは世界的にインドの田舎や、パングラデッシュなみ。日本で世界旅行が経験できる車両だ。しかも運転手が「自動車の箱乗り」よろしく運転しながら、左から半身を乗り出して行先の線路を確認しているではないか。ばかにゆっくり走ると思って、足元の線路を見ると、枕木がないトロッコ列車並み。見間違えかと何度も確認するがいわゆる等間隔の横木の枕木は無い。これでもいいのだろうが足元は寒くなる。線路もやせ細って先の方まで波うち凸凹している。車酔いをしていると思ったらこの線路では立っていることもできない揺れ方だから仕方ない。手掘りのようなトンネルは暗い穴がゆがんでいて、列車のどこかにぶつかりそうに見えるがギリギリの神技か不思議にぶつからない。やがて運転手の「箱乗り」も終わり枕木が出てきて至極の安心。
PB080024x.JPG殆んどが「無人駅」だが正しくはホーム上に「無人の待合室」があり、臭気抜きの煙突がある終戦後のトイレが離れて立っているものをこの鉄道では駅と言う。他に駅の機能は一切なく切符売り場などむろんなし、雨風を避ける安普請の物置が駅と思えばほぼ正しい。もちろん、駅前のコンビニ等望むべくもない。刈りいれの終わった黄色い田んぼと原野が平均的な駅前風景。その代り見え隠れする道路は土木県の名に相応しく整備されている。途中里見駅でツアーの団体客が乗ってきて観光バスを先回りさせている養老渓谷駅で降りる。普通の観光ならこの線を堪能するにはこれで充分かもしれないが我々は変人だからそうはいかない。
上総中野で「いすみ鉄道」に乗り換える。垢抜けた黄色一色の一両車両。小湊鉄道では「運転手に話しかけるな」「カメラのフラッシュはだめ」と変色した張り紙があったが「いすみ鉄道」は違う。運転手がどこから来たのかとか話しかけるのだ。乗り換えただけでこんなに違う。そういえばホームの駅名も小湊鉄道は黒々と下手な手書だったがPB080033.JPGこちらは形を統一したスマートなカラー表示。車内アナウンスも中高年男のだみ声から、女性のテープの美声に変わった。車内の広告も遠く茂原周辺のが出てきた、前の線では鉄道からの連絡事項だけで広告などは無い。見る人がいないので出す人もいないのだろう。なんだか列車の中も広く感じ、運転手に聞いたが同じ幅という。車内の色彩と明るさの違いや天気がよくなってきたことばかりではなく、鉄道路線が変わったために「文化」が変わったのだろう。いや、国境を越えた気分だ、むろん揺れも少なくなった。遠くに緑濃い房総の低山の冬の森を見、近くに色彩のない刈跡の田を眺めて考える。電車はそんなことにお構いなくゴトゴトとジーゼルの匂いをまき散らす。この辺は、懐かしさが満ちた桃源郷のようなところだ。どちらがと言えば当然奇人としては小湊鉄道のまれには出会えないあっぱれな開き直り(設備産業の鉄道事業で設備投資をしないということ)がいい。
大原でJR外房線に乗り換える。昼食は駅近い肉屋の食堂。流石にここまでくれば美味くて安い。昼食時間でもあってか、地元の人ですぐいっぱいになる。知らない街の知らない食堂で、知らない顔の中で聞きなれない言葉に耳を傾けながらの食事だ。こんなDSC01416x.jpgことこそこの旅が求めているものだ。ここにはチエーン店での形ばかりの寒々さは無い。鉄道と同じような囲炉裏と藁ぶき屋根の温かみがある。
JRに乗り換え今更のようにその速さに気づく。列車もきれいで新しい。木更津が大きな町だと改めて思うほど、千葉の内陸は田舎である。横浜へのバスが東京湾を横切るころ夕日が落ちてきた。僅か先の、ほんの対岸に、あの鉄道が走り、あの駅にあの風景に生活する人達がいる。日常を出て、出会うその乖離に、自分の今を見直す。そのために旅がある。
費用;約7000円。
幹事;(企画、記録、)勝巳。(会計、切符、)憲治。(写真)吉生、三貴也。

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