青春切符の旅(只見。飯山線。篠ノ井線)(2015.12.13~15)

user-pic
0
tadamizenin.jpg

豪雪の「只見線」に加え、林檎畑の千曲川に沿った「飯山線」。田毎の月と姥捨て伝説の「篠ノ井線」を回る忍耐が試せる青春切符の旅を理想とするはずだったが、そうは問屋がおろさない。豪雪も林檎も皆無。青春切符の利用方法からくる制限事項が災いして、と言うよりも地球規模での80数年ぶり、観測史上初めての暖冬異変をもろにかぶって、晩秋の変に暖かな雪のない豪雪地帯を回る。大地は、枯れすすき色、所どころに取り残した柿がある家々は雪囲いの準備こそは終わっているものの、全くの晩秋風景。
暗い空のじっと雪に備えている村落はこの地の誠実な暮らしとこれから来る厳冬の厳しさに宿命のように厳然と立ち向かっている風景だ。昨年の冬は列車の屋根も見えない雪の中の旅だったが、どちらも優劣はない。あるとすれば歳と共に錆びついた感性の劣化だ。

tadambandai2.jpg

お世話になった鉄道駅では、駅員が私たちが前日下車したのを覚えていて、にこやかに話しかけてくる。当分来ない汽車に誰もが余裕で談笑する。新宿や池袋の殺伐とした駅員には決してない柔和なこの地にしか見られない人間の顔だ。
途中から車中で出会ったお婆さんの娘の話を聞く、よっぽどうれしかったに違いない、娘への土産の白菜をくれるという。その重い白菜を家まで持って帰った人も、その話を聞いた人も、みんなをこの沿線は人間に戻してくれる。ここは私たちが求めている桃源郷だ。

  • 参加者5名  勝巳。憲治。三貴也。善右衛門。輝夫。
  • 集合;12月13日(日)6時50分 JR横浜駅中央改札口
      切符は勝巳が準備し同時改札。切符枚数 4人×3日分=12枚(5枚セット3枚購入)。
      横浜発7時07分発 湘南ライナー宇都宮行に乗車のはずがどうしたわけかそんな列車がな く他の列車で行く、団体行動の青春切符の旅は冒険と不便さと全員協力の痛快な旅だ。
  • コース;
    • 第一日(12月13日(日)
      横浜発7時27分――宇都宮着9時20分(乗り換え9時32分発)――黒磯着10時23分(10時27分発)――郡山着11時30分(11時42分発)――会津若松着12時59分着(13時09分発)――会津川口駅着15時0分―連絡バス15時30分発――只見駅着16時25分――(宿送迎16時25発)――宿着16時40分。
      宿泊;奥会津温泉ゆの宿「松屋」0241-82-2290 6,000円2部屋。
      車窓から蒲生岳、浅草岳、鬼が面らしき山が見える。流石高山は雪に覆われている。
      宿は只見の大きな宿だが我々の他は工事関係者の3人のみ。温泉は新しく木の香も気持ちよい。奥会津特有の愛想こさないが元気な若いおかみさんの運転で駅から宿に向かう。宿で早速只見線応援団に入会して「奥会津ふるさと応援商品券」をもらい一人当たり2,000円の割引。なにしろ只見線は平成23年7月の新潟福島豪雨で4か所の鉄橋が流され一時全線不通に。其の後もいまだに会津川口から、只見の間27Kmはバスによる代行輸送で只見線全線の5分の一が4年も不通になったままである。
      tadami1.JPGもっとも、復旧には相当な費用が掛かり、もともと赤字路線で、鉄道会社としては頭の痛いたいところだろう。そのうえ、復旧に当たっては、東北大震災後、建設関係の法律規則の変更もあって一部線路を現在の所より高所にしなければならず、費用は更に高くなる。踏んだり蹴ったりだが、単に経済収支のみでは計り知れない只見線のような鉄道の存続にこそ鉄道の本質的な価値があると思う。
      宿の近く夕暮れの只見川を散策する。川の水は冬の北欧の空を映すような黒い色で急峻にして白波をたたえている。車一台が渡れる錆の出た鉄橋の道はクマ出没注意の看板から奥は深く山に食い込んでその先は見えない。遠い岸辺に夕暮れ近い黄色い光でやっと国道があることがわかる。見事に誰にも逢わない。除雪用の大型機械が雑然と放置されている。やたらとお墓が多い。それも平地の少ない山間で一番いい場所に。
    • 第二日(12月14日(月)
      tadami2.JPG宿発9時10分(送迎)――只見駅発9時36分――小出10時43分着(11時10分発)――越後川口着11時21分(昼食13時04分発)――戸狩野沢温泉15時03着(泊)。
      早朝、只見の街を散策。只見小学校は高級ホテルのように大きく立派だ。これで小学生は現在100人。近くの鉄筋の味気ない只見高校より校舎は美しい。宿直の先生か、窓の中から変な5人組に戸惑い顔で挨拶をする。
      信濃川と魚野川の合流する越後川口で90分近く列車の接続を待つ間、何でもあるという駅員推薦の地元の食堂で昼食。田舎で食堂探しは改札の駅員にいつも使っている所を聞くに限る。あの山深く流れる魚野川の河川敷がここでは広く冬枯れている。遠い雪を頂いた山は魚沼三山か。本来なら飯山線はここも豪雪地帯。津南、十日町は泣く子も黙る本場の豪雪。特に新潟長野県境の森宮野原は積雪8M近い記録で日本一。津南から入る秋山郷の冬は江戸時代からその名を全国に馳せている。いつの間にか、信濃川が、千曲川に変わり、辺りは開けてくる。昔より林檎畑は少ない。収穫後で目立たない為か。志賀高原や高社山が黒々と逆光に巨大な姿を見せ始め、豊野を過ぎると善光寺平は近い。
      tadamisusuki.jpg宿泊;四季の宿「かのえ」0269-65-4570 シルバープラン8,000円+税。
      宿は戸狩スキー場でも有数の立派なところ。迎えの車でかなりの山道に入ると、終点に近いスキー場のゲレンデ下に宿がある。時間も早いので、周辺を散策する。空は晴れ春先のような光でそれでいてキッリと気持ちがいい。夕暮れの逆光の山裾に渓を隔てて野沢温泉の屋根が望見できる。かなり山上でもこの辺りは清水がわいている。「日光清水」と言うらしいがもっと上に日光川があるためか。ここは信越トレールの一部をなしているようで、是非、ブナ林に残雪があるころ挑戦してみたい山域だ。もちろんこのスキー場も今は秋の枯草に覆われている。
      tadamisyokuji.jpgこの宿こそ我々の他誰もいない。料理は、シルバーコースを頼んだので食事はいたって健康志向。山菜や、料理は全て手作りで冷凍物は一切使用しないのが当然の様だった。親切で、気取らない商売上手な人のいいおかみさんは大阪出身。スキーに来て嫁入りしたと、帰りの送迎車を運転したご主人がこの時ばかりは饒舌にうれしそうに言っていた。
    • 第三日(12月15日(火)
      宿発8時―(送迎)―戸狩野沢温泉8時38分発――豊野9時25分着(9時26分発しなの鉄道北しなの線250円)――長野着9時43分(昼食購入10時05分発篠ノ井線経由甲府行)――松本着11時25分直行(11時34分発甲府行に)――甲府13時49分着(13時52分発)――八王子着15時30分(15時42分発)――町田着16時。
      しなの鉄道北しなの線はどこで入ってどこで出たかわからない不異議な路線だ。
      長野から松本経由で甲府行の列車など予想もしなかったのでなんども確認する。やはりあった。稲荷山、冠着、姥捨等の駅を善光寺平を見おろしのんびり普通列車は温かい冬日の青空のもとに行く。うとうとして見落とすまいと睡魔と闘う。いつ見てもこの景色は日本の代表的里山風景だ。飯山線や、只見線に比べて何となく空が多く谷が浅く広い。千曲川は藤村の詩情豊かにゆったり流れている。長野市周辺はオリンピックですっかり変わった。やたらに、高速道路がはびこっている。北アルプスが見え始めると間もなく松本。大きな駅だと今までが今までだからつくづく思う。乗って来る人も何となく都会人を感じさせる。八ヶ岳を過ぎ、tadami3.JPG右に黒々と沈む甲斐駒岳を見て、甲府盆地のブドウ畑は続く。甲府始発の中央線も途中までは我々の専用列車。町田で小田急線に乗るところで解散。町田の若い速足で全員同じ顔の人ごみに目が回る。
      今までは夢の中だったのか。
  • 持ち物;
      防寒具(列車外の移動時に必要)雪道を考慮して靴は登山靴がよい。
      常備薬(豪雪時列車不通に備え余分に)保険証。懐中電灯。非常食。手袋。第一日昼食、 車中飲食物など。
  • 費用;青春切符3日分(2370円×3日分)=7110円。宿泊2泊14,000円、その他。
  • 分担;勝巳(リーダー、企画、記録、写真)憲治(会計)三貴也(写真)。
  • トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://kenhai2100.com/cp-bin/mt/mt-tb.cgi/1630

    コメントする

    カウンタ

    月別 アーカイブ