信濃の展望の春山と行き止まりの温泉。国宝古刹、信州の鎌倉塩田平。脩那羅峠石仏群。荒天で計画中止数度。執念の山域。2日間他の登山者に合わず。
前日から雨が降る予報だったが出かける。青木村は雨が降らないだろうとの読みが当たった。途中、同行者を下川井で拾って一路、登山口を目指す。国道143号を「大法寺入り口」の看板で右折、谷あいの村を奥に奥に車を進める。谷は満開の桜、水仙、桃、モクレン、れんぎょう等の花が農家の庭先に競い、低く垂れる降りそうな雨雲の下で、山はやっと来た春の緑にむせる。
適当なところで車を止めて歩きだす。この辺は松茸の山。いたるところに「止め山」の張り紙がある。適年輪赤松の林が、下草の少ない陽のあたる斜面に山深く続いている。ここを秋に通過すると疑われるに違いない。道は、古い林道跡らしく幅広く傾斜も少ない。あるはずの畳石公園に出会うことなく、林道を離れ一気に尾根に取りつく。さすがにこの山を遠望した時の急な山頂への傾斜。一汗かいて山頂に出る。途中、鳥居の手前に「岳の平」なるところがあったはずだが見当たらない。小さな御宮が祭られている山頂の展望は雲さえなければアルプスも、浅間も手に取る360度展望であろう。何といっても、足下の花なす谷間の古い村がいい。山頂に近い唐松の林を下るとやがて赤松林の松茸の森に戻る。車はすぐそこだ。そこから、10分も下れば国宝の三重塔がある。1333年建立の渋い時代色調の見事な落ち着きだ。国宝なのに、入口に「只今犬の散歩中」の看板を立てて誰もいない。塩田平の国宝はいい。
今日の宿泊は、田沢温泉。狭い石畳の道を挟んで、藤村も愛した由緒ある木造の旅館が数件。いまだに、湯治宿もある行き止まりの本物の温泉場である。付近を宿の下駄で散策すれば、春は桜樹、夏は蛍の大群に出会う。今日は珍しく高級旅館泊。トイレがやけに綺麗なパンフレットに使われている旅館自慢の部屋に泊まる。夕暮れる桜の村を眼下に大きな露天風呂に全身を浸す
7時20分、朝から温泉に入りしっかりと朝食。我々のほか二人が宿泊しただけの静かな貸し切り宿だった。未連を振り切り宿を出発。田沢温泉に近い登山口から登ることにする。オートキャンプ場を過ぎて、車止めの少し手前で駐車。車止めと云っても、倒木が路をふさいでいるだけの豪快な物。ここも「松茸を採るな」の張り紙。この道は「上田地域トレッキングコース」になっているらしく道標が点在している。40分も登ると、林道が切れるころに大明神の祠のある「月波の泉」(つくばのいずみ)に出会う。細い湧水が枯れることなく出ている。旨い水だ。急な登りで一気に頂上に躍り出る。山頂は、これも展望がいい。塩田平の山はどれも見事に展望に恵まれている。下山は来た道を下るのだが、急勾配に緊張する間もなく「月波の泉」着。ここからの太い林道跡を駐車してあるところまで談笑と春山の中を行く。
昨日行けなかった脩那羅峠に行くことにする。これが結構山深く ほとんど松本側に入り込み、細い谷沿いの道を何処までも登る。安宮神社のひんやりする森下に小さな石仏群がある。昔見た石神仏が全く同じように苔むしたままに鎮座していた。こんな山奥に、如何に信仰心といえどもよくも運び上げたものだ。帰り道に「うどん380円」という看板が人家もない山道にあったので、勇を決して急坂を登り、寄り道をする。いまだに何処だかわからないが、ともかく山の中だった。民家の座敷で待つこと30分。出てきた天ぷらは、てっきりこれで5人分と思ったのに、一人づつ5人分出てきた。帰りは地元の車すらめったに通らない坂城までの山道を抜ける。信州は山国だとつくづく実感する。
運転の孝儀さんに申し訳なく運転交代を申し出たかった。
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