No.268 佐渡、ドンデン高原、外海府記録(2011.5.25--27)

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(記録担当 勝巳)

Sado_1.jpg 佐渡も大佐渡先端からシベリヤ、シホテアリニ山脈側の外海府は物好きな観光客がせわしなく通り過ぎることでもなければ、ほとんど訪れる人とていない。ガソリン給油すら困難で、食堂を探して15kmも行く羽目になる。海沿いに伏す茶色に燻した小さな集落を曲がりくねった道が越え、また岬の先にポッツリと村が続く。道路ができたのは古いことではない。それまでは、村から村へは舟で渡してもらうか、険しい山道を歩くしかなかった。蛙鳴く僅かばかりの水田が光る寒村である。

Sado_2.jpg ここの冬は実に厳しい。鉛色の海は荒れ、どす黒い雪空を遠雷が鋭く切り裂き、ゴウゴウたる海鳴りに飛び散る波の花が屋根を越える。人は、ひっそりと春を待つ以外にすべがない。いま、その外海府が遅い春を迎え花に包まれている。カンゾウが咲き始め、ハマナスがそよかぜに香りを運ぶ。 岸辺の僅かな平らには紫の小さな花が一面に咲く。波は眠ったような初夏の陽の中に漂い、巨岩は早春の草に覆われ、海鳥がのんびりと高くたゆたう。「全て世は事も無し、神天にしろしめす」光景である。本当の佐渡は外海府にある。

Sado_4.jpg タタラ峰という山域の中に「尻立山」があるがこれがドンデン山という訳ではない。ドンデン山とはよくあるタタラ峰の山域総称である。花の百名山と云われイワカガミ、ユキワリソウ、カタクリ、ヤマツツジ、シャクナゲなどが競うのだが一時に咲きそろうわけではない。 今は残雪の湖畔にカタクリが群落し、イワカガミは、路傍にいくらも見られる。山頂周辺の芝生の絨毯に座ると海を行く白いフエリーが浮かび、じっと見つめて初めて「あっ動いている」と分かる。「のんびり百名山」があれば当然入選する山である。

 今晩の宿、「ドンデン山荘」は立派な旅館。設備は市営、運営は民間。山頂にあっても豊かな水は朝ぶろさえ可能だ。但し、商業ツアーが団体でくるのは車で横付けできる山荘ではいたしかたない。ここを起点に僅かに雪の残る金北山を越える大佐渡縦走は快適なコースであろう。

Sado_5.jpg 翌日向かった大佐渡北端の「二ツ亀」は引き潮に歩いて渡れるが、満ちてくれば完全な島である。二頭の巨大な亀が海上にうつ伏している。狭い砂州を渡るのはわずかながら冒険心を呼び起こすが、島で行き止まり、そこから先に登る道はない。やはりここは遠い佐渡の最北である。

Sado_9.jpg 海岸沿いのハマナスの花の道を長閑に潮風に吹かれていくと突然岩穴に賽ノ河原がある。幼子を亡くした親の深い悲しみに満ちている。のどかな風景が一瞬に厳しい風景に変わる。風車が海風に僅かに音を立て、亡き子供たちが使った古い人形が空を見つめ、お地蔵さまの赤い布がなびいている。父母を慕い幼子が泣きながら積むという小石が痛々しい。子を亡くした親はどんな気持ちでこの地の果ての様な洞窟を訪れるのだろうか。

Sado_6.jpg やがて細い道は、ハマナスに囲まれて崖下にへばりついている「願」の集落に至る。10軒を超すことはないだろう。40数年前ここの民宿に泊まった時は、歩いて山を越えやっとたどり着く集落だった。

 歩き始めにフイシャーマンホテルに残してきた車をこの集落から取りに行くのはげんなりするほど道のりがある。かって宿泊した民宿になんとか頼み置いてきた車まで便乗させてもらう。全く知らない人からの面倒な依頼事に、快く応じてくれる。ここに住むと人はみんなこの自然に純化されるのだろう。

 海から160mも屹立する日本三大巨岩である「大野亀」に登るのに一苦労だが、カンゾウが所々思い出したように黄色の花を咲かせている。風のある山頂は狭く、足下は崖。海は丸くして、これから入る外海府の道が断崖の下を心細げにうねうねと続く。人家など全く見渡らない。

Sado_7.jpg シベリア側の海岸を南下する途中、真更川集落で林道に立ち入る。5kmも入ったところにある「山居池」は伝説の龍がすむ池で森の中に深く潜んでいた。湖畔の細い踏み跡をたどると何とバーベキューコーナーと思われる建物がある。どうやって誰が来るのだろう。山道はここで水没していた。

 狭い海沿いの対向車とて無い道をひたすらすすみ、いくつかの集落らしき 人家を過ぎて今日の宿泊先の「岩屋口」集落に至る。通り過ぎてきた風景からは大きな村の印象を受けたがせいぜい20戸程度だ。昼食の場所はそこから15km先にあり、私達が一番高額なメニューを注文すると、刺身が寝転がらずに立っていた。どういう訳か、帰ると同時に店は閉店した。たぶん、今日の売り上げは十分だったのだろう。

Sado_10.jpg まだ明るいので宿に聴いておいしい清水を汲みにいく。下駄を履いてという散策だったが行けども行けどもその清水が見つからない。その代り、はからずも新潟大学の演習林と鋭い岩山の渓谷と原生林に出会った。

 海岸の吾妻屋で夕方のひと時を過ごしていたら、村人が「わかめ」を取りに来たので頼んで譲ってもらった。なんだか、これだけのことなのに妙に心に残る風景だ。外海府の夕暮れに素直な心になりきっていたからだろう宿泊するユースホステルには無口なおじさんと、人のいい小母さんのほか野生のタヌキが一緒に住んでいる。丸々と毛並みが良く、顔も美形だ。裏山に家があるらしい。あの暗い三角の山裾だ。しんしんと遠田の蛙の鳴き声と春の夜のタヌキは良く似合う。

Sado_11.jpg それにしてもこんなに海の幸の御馳走が出て、7500円では赤字に違いない。翌朝、フエリーに乗り遅れないよう早めに宿を出る。なんだか、もっと居たい宿だ。村はずれの観音洞窟は深く薄暗い中に大きな池がある不思議なところである。「真更川」から昨日訪れた「山居池」を通る立派な林道を更に先に進み、大佐渡の原生林を縦断し本土側に達する。また、フエリー乗り場の土産屋で何やら沢山買い求めやっと安心。

 朝食は、宿の豪華で誠実な弁当をみんなで囲み二日間を語る。新潟港近くで村上のソバ等を食べ、乗った高速道路はやがて上越国境の雪山を抜けて、表日本に出る。すまないことだが、あとは運転する方に任せて長い帰路に就く。

  • 参加者:勝巳、才美、孝義、多摩江、憲治、三貴也、幸子、茂子、計8名(男4、女4)
  • 日時:2011年5月25日(水)―26日(木)―27日(金)2泊3日
  • 集合:5月25日(水) 二俣川農協裏等 6時20分(車2台)
  • コース概要
    • 第一日(5月25日。水)快晴
      二俣川6時20分――関越自動車道練馬IC―300k―新潟西IC新潟10時――フエリー港10時30分――(昼食)――乗船12時――フエリー12時35分発ーー佐渡両津港着15時05分――ドンデン山荘16時着――尻立山――ドンデン池等高原散策――17時30分(宿泊)18時夕食
      宿泊ドンデン山荘 Tel:0259-23-2161 7500円 2部屋。快適だが混んでいる
    • 第二日(5月26日。木)晴れ
      ドンデン山荘発(6時30分)――羽黒神社――羽吉の大桑――フイシャーマンホテル休憩――二つ亀散策――賽ノ河原――大野亀山頂往復――真更川林道――山居池往復――岩屋口集落――高集落(14時昼食)――岩屋口(外海府ユースホステル)宿泊17時――清水捜し散策――19時夕食――タヌキ君出合い20時
      宿泊 外海府ユースホステル Tel:0259-78-2911(矢部氏)
      特別料理追加で7500円4部屋 綺麗な親切な誠実な宿。
    • 第三日(5月27日。金)曇り
      朝食弁当で宿出発5時50分――観音堂洞窟――真更川――山居池林道経由――北小浦集落――両津港7時00分着(朝食弁当)――フエリー両津港乗船8時45分――出発9時15分――新潟着11時45分――新潟港ショピングセンターで昼食(そば等)――横浜着18時10分
  • リーダー勝巳(記録)。孝義(車)。健二(車)。会計 幸子、茂子
  • 費用 フエリー、車、高速1万円、宿泊、昼食の総費用3万6千円程度

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