No.263 千葉県、嵯峨山(さがやま)(316m)山行記録(2011.2.7)

user-pic
0

  Sagayama_1.JPG(記録担当 勝巳)

 その人は、温かい冬日の中で筵に水仙の束を広げ始めた、私達がちょうど山を下り小さな広場に辿りついたときだ。この道は、嵯峨山に登山する人以外、通る人とてなく、もし、私達が通らなかったら一日中、ここで日向に座って水仙を買う客を待つつもりの長閑な老人だ。

Sagayama_3.JPG 「おじいさん、この山にほかに誰も入っていないよ」「土産にこの水仙ひと束200円でどうだ」「もっと安くしてよ」「だめ」「全部かうから」「いいよ」と書いてみると順調だが、「それなら他で買ってくれ」等の会話が混じり、かなり高度な駆け引きの結果だ。その水仙は参加した全員の家で今、ほの白い小さな花の香をいっぱいに放っていることだろう。

Sagayama_4.JPG  ともかくここは水仙の山であり谷である。2万5千分の一「金束」の地図上の東沢コースを登る。人も歩かない水仙の谷間では水仙を踏まずに歩くことが困難なほどだ。突然、車道が尽きて沢沿いの山道に入る。周囲は長閑な水仙の道だ。GPSでは完全にコースを歩いているが、もう、何年も人が歩いていない道は朽ちている。残り僅かで嵯峨山山頂をGPSは示しているがここは安全第一。残念だが全員が事故なく登ることが最優先との立場に立ち、もうこれ以上は無理と今登ってきた水仙の谷を未連なく引き返す。

Sagayama_5.JPG 再度、小保田の橋の袂から、今度は、分かりにくいコース表示に従い最も左の沢沿いに、簡易トイレのある駐車場まで車で入り、再度、嵯峨山に向かう。このあたりはイノシシよけの電気柵が多い。先ほどの道とまるで違う郡界尾根までのしっかりした登山道に一汗かき、ほどなく嵯峨山まで50分の小さな標識を過ぎ、水仙ピークに着く。少し岩が出るが危険な事はない。こんな山奥に水仙畑を作る苦労は大変なものだろうと思いながら水仙の芳香に包まれて春の様な Sagayama_6.JPG陽の斜面で昼食。荷物をここに置き、ピストンで嵯峨山山頂に。山頂の展望は西側だけだが、途中の延々と続く遥かな山なみを俯瞰するにつけ千葉は山国だとつくづく思う。この山深さは尋常ではない。標高は低くても隆起地形の山谷は複雑に入りこんでいて、加えて山村の衰退とともに道はあっけなく廃道になる。房総南部は僅かに海岸線だけが町である。ここで件のおじさんから土産に水仙を分けてもらい、保田の漁港に向かう。漁協直営のラムネ温泉「ばんやの湯」に入る人、近くの道の駅に買い物に行く人。ゆったりした時間をとり、金谷のフエリー乗り場へ向かう。ゴルフ場の送迎車からぞろぞろとおじさんたちが降り立ちフエリーに乗りこむ。舟は、春風を思わせる海をゆったり航行し、鋸山の房総半島を後にする。海の光の中、見慣れない多くの船が行きかう。

  なんだか山登りの帰りの気がしない。

  • 日時 2011年2月7日(月)快晴途中アクアラインで濃霧、そよ風、暖か
  • 集合 相鉄線 二俣川駅「農協ビル」裏 6時20分
  • 参加者
    孝儀(運転)、多摩江、善右衛門、恵美子、勝巳(記録)、才美、憲治(運転)、貞子、世義、きみ子(会計)、吉生(運転)、博子、幸子、以上計13名
  • コース概要(着/発)
    二俣川(/6:30)――アクアライン経由(濃霧)――富津館山道路――鋸南保田IC――保田(8:30/)――高圧線下通過――小保田(こほた)(8:50/)――バス停小保田横から左に入る細い道――小さな沢を渡り1/25000地図上の東ルートをとる――沢沿いの水仙畑の中ののどかな道――車道が切れる――枯沢の廃道(9:30)――嵯峨山直下の急登地点で引き返し(10:00)――駐車場から正規の西ルートへ再挑戦――簡易トイレ駐車場(10:40)――郡境尾根(11:10)――水仙ピーク(11:50)――嵯峨山山頂(12:00)――水仙ピーク――簡易トイレ駐車場(13:00/)――保田漁港(温泉、買い物)(13:20)――金谷フエリー乗り場(14:20)――横須賀(15:00)――横浜二俣川(16:00/)(解散)
  • 1/25000地図保田」「金束

 

 

ウイリアム ワーズワース「水仙」の詩より

Sagayama_2.JPG深き渓、高き峰越え天高く一片の白雲として逍遥していたとき
突然それはあらわれた。黄金色のおびただしい水仙の花の群れだ
  湖の岸辺、深いもりの緑の中にそよ風に吹かれ小さくその花々は踊っていた。水仙の花は切れ目なく果てしなく、天の星のようにきらめき、揺らめき続いて翠濃き湖を見果たし切るまでも縁取り、人知れず香り気高く、嬉々として踊っているのだ
万輝するさざ波の湖も、見はるかすこの水仙の華やぎに遠く及ばない
歓喜に満ちた花々に突然出合って、誰が、胸高鳴ることなくいられよう
詩詠みのわたしはこの光景を確かに観たのだ。
遥か過ぎし日の激しくも豊かで新鮮な感情の高ぶりの中で
  だが、この光景が、どんなに自分の人生に薫り高き美しき恵みをもたらしたかは、その時私は気付いていなかった
  老いて後、寂しさや虚しさに耐えかねて、長椅子に悄然として癒されぬ 深い想いに浸るとき、突然、この光景があらわれてくる。
孤独な心に、鮮やかに、かの日の花達のそよぎが聞こえてくるのだ。
  私は、その時、歓喜に震える。水仙の花とともに私は敢然と起ちあがり花の群れと踊りだす

(抄訳 勝巳)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://kenhai2100.com/cp-bin/mt/mt-tb.cgi/681

コメントする

カウンタ

このブログ記事について

このページは、akirafが2011年2月 8日 17:02に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「嵯峨山(さがやま)316m(2011.2.7実施済み)」です。

次のブログ記事は「サロンNo.46 根岸森林公園馬の博物館、旧柳下邸の雛祭り(2011.2.19)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。