天気は快晴の予想に反し曇り。蔵王「御釜」周辺は、平日なのに多くの観光客でにぎわう。熊の岳に少し向かい、たまに雲の切れ目からの太陽の光に美しく変化する「御釜」。何度見てもこの火山の跡の神秘の湖と周辺の荒涼とした岩山は、美しいというより凄惨な地球の自然を想わせ、思わず立ち止まさせる。
次いで、幻の秘湯を求め紅葉の森の散策としたが、「かもしか温泉跡」までは往復3時 間を超えるため、秋の陽の短さを思い断念。途中までの「賽ノ磧」の散策にとどめる。平坦な低木地帯の真ん中に立派な舗装道路があり、かって「かもしか温泉」がはやっていたころの栄枯盛衰を思わせる。ここまで来る観光客はいない。蔵王名物の強風も静かだ。紅葉の原っぱの石に腰かけてゆったりした秋に囲まれる。どこもかしこも秋だ。今日はもう温泉宿に行き着けばいい。
宿は、深い沢沿いの山の中の一軒宿。宿の固有名詞が無く、温泉の名が即、宿の名前と云うかなり贅沢な秘湯だ。登山をするには少し高い宿だったがなんとか交渉して値段を決めたので、行くまでどんな部屋に泊まらされるかと少し不安だったが、どうして立派な部屋だったし、料理も手が込んでいて、温泉はもちろん24時間かけ流しの本物。ゆっくり露天風呂に入ってと、なんだか、登山をする気分ではない。
今日は屏風岳と張り切って出発しようとしたら、カード支払の機械故障で清算の遅れが出る。こんな山の中で、カードの使用が出来なくなったらどうやって修理するのだろうなどと要らぬ心配をする。
天気は、曇りであまり良くない。寒くはないが、夏山に慣れていたことで山の寒さ対策に甘さがあったことを痛感する。南蔵王縦走コースに入る。冬立派な樹氷となる青森トドマツの林を抜け、快適に、刈田峠の避難 小屋を過ぎ稜線に取りつく。何年か前に、悪天候に阻まれ引き返したところを過ぎるころは雲も切れ行く先の峯が木々の中に見え隠れする。このあたりでも、いったん天候が悪化すれば寒さと、視界が無くなる濃霧と、強風はかなりなものだが今日は、そんなこと想像もできない。
振り返ると、自動車道路に刻まれた刈田岳がやっと立っている。前山を越えるゆるい登りに続き、杉が峰の山頂に躍り出る。 さてどうするか、また、雲が出てきた。天気予報は当てにならないのが秋の、しかも山の天気だ。ともかくは、芝草平までは行くこととし、少し下ると既に草紅葉した地塘があちらこちらに見え隠れしてきた。
間もなく、立派な木道になり、階段式のベンチがあるところがこの湿原の中心だ。まだまだ、遠くに湿原があるが植生保護のため立ち入り禁止区域となっている。見はるかす遥かかなたまで相当大きな湿原であ る。夏は、チングルマ、イワカガミ等の高山植物で覆われるのだろうが、今は、なにもない。その代りこの原っぱ全部が我々4人のものだ。乾いた、大きな木製ベンチに腰掛けて、いつの間にか晴れてきた秋の陽を快く浴びる。ここでゆっくりして頂上にはいかないことに衆議一決。世知辛いこのご時世に「この贅沢さはどうだ」の境地である。
帰りはゆっくりと、たまに雲が出る道を、クマよけの笛を吹きながら下る。そろそろ、ま た、蔵王エコーラインの車の音がして、下界に戻ってきたことを気づかされる。
それにしても、博子さんは大した頑張りだった。当初、途中で引き返すはずが、何だ、かんだと云って全部踏破してしまった。誰だってはじめは不安だ。山を降りてから「道が急に細くなって、どうなるのかと心配だった。歩けなくなったら、置いていかれるのでしょうか」との言葉を聞き、忘れていた懐かしい初心者のころを思い出していた。微笑ましく蔵王の秋の中で。
- 日時 2010年10月18日(月)--19日(火) 1泊2日
- 参加者:勝巳(リーダー、記録)、才美、吉生(車両)、博子、以上計4名
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コース:(着/発)
- 10月18日(月) 徒歩3時間程度
希望ヶ丘(/6:30)――東北自動車道白石IC(12:00)――(蔵王エコーライン)――(蔵王ハイライン)――御釜散策(13:30)――賽ノ磧散策(15:00)――蛾が温泉(15:30/)(泊)
宿泊先:「蛾が温泉」Tel:0224-87-2021、13,000円/人(通常はもっと高額) -
10月19日(火) 徒歩4時間30分程度
宿泊温泉(/8:40)――刈田峠(9:20/)――前山1684m(10:00)――杉が峰1745m(11:00)――芝草平1689m(11:30)――杉が峰(12:30)――前山(13:00)――刈田峠(14:00/)――遠刈田温泉(14:30)――産地直売所――東北自動車道白石IC(15:00)――横浜(20:30/)
- 10月18日(月) 徒歩3時間程度
- 持ち物:雨具、防寒具、懐中電灯、杖、タオル、水筒1L以上、二日分昼食弁当
- 費用:合計2万円
- 1/25,000地図「蔵王山」
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