No.252 立山縦走山行記録(2010.8.4--7)

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Tateyama_1.JPG【第1日】8月4日(水) 晴れ、気温高し。

(記録担当 昭)

 集合予定時刻には参加者全員が揃い、「MAXとき307号」は定刻7時48分に出発。長いトンネルを抜けて1時間半もかからず越後湯澤駅に到着、接続する特急「はくたか4号」に乗り継ぎ、ほくほく線・北陸本線経由で富山駅に11時22分到着。跨線橋の上から今夜の宿「アパ・ホテル」の所在を確かめると、右手線路の北側にそれらしき看板を見つけ、裏口から改札を出る。

Tateyama_2.JPG 駅近くの温度計は36.8度と表示している。フェーン現象で富山は太平洋岸よりずっと気温が高いらしい。正面に地元企業インテックの本社ビルが聳え立っている。暑さに耐えながら線路沿いにしばらく歩くと、やっと目指すホテルの看板が見えてきてホッとする。

 ホテルの中のひんやりした空気で人心地がつく。投宿の手続きを終えて、リュックなどの荷物を預け、レストランへ。昼食には無料サービスでサラダ・スープ・コーヒー・ジュースなどつき、それだけで腹一杯の感じ。

Tateyama_3.JPG 照りつける陽光の中を駅前まで戻り、「たっぷり八尾満喫コース」と称する定期観光バスに乗車。1時半発車。車内は蒸し暑く、冷房の吹き出し口を全開しても涼しくはならないが、4月入社の新人ガイドの案内にちゃちゃを入れながら市内観光に出発する。

 最初はマスの押し寿司本舗「源」の工場見学。昔は地元の神通川でとれたマスを使っていたが、今はすべて北欧産の輸入品を使っているとのこと。試食したが今一。

Tateyama_4.JPG ここから国道41号線を南進、右折して越中八尾(ヤツオ)に到る。「曳山展示館」で絢爛豪華な曳山を見学。毎年5月3日には6基の曳山が坂の町を練り歩くのだそうだ。ここはまた「おわら風の盆」で有名。二百十日の9月1日から3日間は、哀調を帯びた三味線、胡弓、太鼓の音に合わせて、町中の老若男女が踊り明かす町流しで明け暮れ、毎年30万人の観光客が訪れると云う。炎天下の諏訪町本通りで日差しを避けながら地元の方の「風の盆」についての熱弁を聞く。

Tateyama_6.JPG 市内に戻り、薬の老舗「池田屋」で丸薬製造の実演をみてから、富山駅前まで話題の「ライトレール」に乗車。低床式で乗り心地も悪くない。

 駅前で翌日の弁当などを調達してから解散。夕食は各自思い思いに地元の特産品を賞味したようだ。

  • コースタイム(着/発)
    東京駅(7:30/7:48)――(MAXとき307号)――越後湯澤駅(9:04/9:14)――(特急はくたか4号)――富山駅(11:22/)――アパホテル富山駅前(11:40/昼食/13:00)――富山駅前(/13:30)――(観光バス)――マス寿司本舗――八尾曳山展示館――諏訪町本通り――八尾おはら資料館――池田屋薬問屋――(ライトレール)――富山駅前(16:30/解散)――アパホテル(宿泊)

 

Tateyama_8.JPG【第2日】8月5日(木)晴れ、暑さ厳しい。

(記録担当 昭)

 今朝は5時すぎには起床。6時半からホテル1階のレストランでバイキング形式の朝食。7時すぎにはすべての荷物を担いで駅前のバスターミナルへ。室堂行きのバスは7時45分に発車。美女平、弥陀ヶ原を経て、標高2450mの室堂バスターミナルに10時すぎに到着。コインロッカーに荷物を預け、身支度を整えて、10時半トレッキングに出発。勝巳リーダーの計画で、今日は全員が雄山登頂を目指すことになった。

Tateyama_9.JPG 目前に聳え立つ立山三山の右肩には社が小さく見えるが、あれが本日最終目標の雄山の山頂らしい。きつい傾斜の下の中腹に横長の建物が見えるが、あれが当面の目標、一ノ越避難小屋のようだ。

 ターミナルを出てしばらくは岩を敷き詰めた舗装道路で、平坦ではあるがごつごつした路面はいささか歩きにくい。雪渓にかかる。滑らないように前の人の足跡を辿ってかかとからステップを踏む。道の傾斜は次第にきつくなったが、リーダーの絶妙な歩行ペースで、標高2500mを超える希薄な空気の中を何とか一歩づつ登り続ける。

Tateyama_10.JPG 祓堂で小休止ののち、6つ目の雪渓を越えると、傾斜はさらに急になりジグザグを繰り返すが、すぐ近くに見える避難小屋がなかなか近づかない。やっとの思いで小屋前の広場に到着。ここで昼食。少ない日蔭を求めて、小屋の脇の壁にもたれて握り飯を頬張る。

 ここで孝儀さん、多摩江さん、伊久枝さん、文子さんの4人が待機することになる。 Tateyama_11.JPG食休みを終えて残り13名が山頂を目指して出発。前方には小学生の一団がブルーの紐のように数珠つなぎになって登って行くのが望める。余計な荷物を置いて身軽になってスタートした恵美子さんと洋子さんが、最初の休憩地点でリタイア。続いて次の休憩地点で龍太さんと美保さんが引き返し、残りは9名になった。

 下を見ると小屋の前で待機メンバーが手を振っているのが見える。すり鉢状の立山   Tateyama_12.JPG連峰の山肌に残る数々の雪渓は去年の旭岳山頂から望んだ光景を思い起こさせる。相変わらずのゆっくりしたペースで前の人の足元だけを見ながら歩を進めるうちに,雄山山頂に到着。時に1時半。小屋から1時間30分かかったことになる。

 一等三角点の付近で一服。荷物を置いて雄山神社に向かったが、お祓いとお札を頂く費用として500円かかると云うので、神域に入るのはパス。お祓いをする緋色の装束の神主の姿が遠望され、打ち鳴らす太鼓のリズムが耳に残った。

Tateyama_13.JPG 記念写真を撮ってから下山開始。岩場とザレ場の交錯する道を、如何に滑らずに落石も起こさずに降りるかに全神経をつかって慎重に下る。途中、邦子さんがペースを落としたが、それでも頂上から小屋に到着するのに要したのは45分。登りの半分で下山できた。

 ここから待機メンバーも一緒に下山開始。最初の雪渓で記念写真。ごつごつした岩の Tateyama_15.JPG舗装道路を難渋しながら下る。下りの雪渓は滑りやすいので、神経を使う。雪渓の左手のはるか上の方から人の声が聞こえる。まさか遭難したのではないだろうかと思いながら上を見ると、数人が岩場で手を振っている。浄土山に登っている人達なのだろう。

 最後の雪渓を渡り終え、いよいよバスターミナルが見えてきたが、足が進まないのがもどかしい。ロッカーから預けた荷物を取り 出し、冷たい水を補給し、小休止ののち、今夜の宿「みくりが池温泉」に向かって歩き出す。

 みくりが池は周囲600m、水深15mの火山活動でできた山上湖。古くは神の台所(御厨)という神聖な池とされ、朝夕立山の雄姿を写し出す神秘的な色合いを持つ。リュックのほかに重い荷物を担いでこの池の脇の階段続きの道を抜けると、ようやく宿に到着。

Tateyama_17.JPG 「みくりが池温泉」は標高2400mにあるわが国で一番高所にある温泉。すぐ隣の地獄谷が泉源らしい。受付を済ませ、2階の部屋に入る。男女別に各1室。男性の部屋は2段ベッドの8人部屋。1人だけメンバー以外の人が入る。清潔な布団と毛布が用意され、のびのびと足を伸ばせて、山小屋とは大違いだ。荷物を片づけ、早速地階の温泉に向かう。

Tateyama_18.JPG 湯船が2つに分かれ、泉源から直接お湯の注ぐ方はあつ湯で、42--3度。隣はぬる湯、39--40度くらい。あつ湯に入ると、今日日焼けした二の腕や首筋がひりひりと痛む。石鹸もシャンプーも使えるので、大汗を流し落してすっきりした。

 夕食は2部制で、われわれは7時から。まだだいぶ時間がある。ここで難問。リーダーからは「高山のため室堂宿泊時はアルコー Tateyama_14.JPGル禁止」とのお達しがある。が、風呂上がりの一杯は何としても捨てがたい。まだ時間も早いし、結果は自己責任だから、と男3人が禁をおかして生ビールで乾杯。気圧が低いためか、回りが早い。夕食の時間までぐっすりひと眠り。

  7時前に目を覚まし、食堂へ。テーブルには所狭しと料理の皿が並んでいる。「つぼ煮」と称する郷土料理が追加で配膳された。山の宿にしては十分すぎるバラエティだった。以下にメニューを列記する。

  1. イカ入りたたきおくら
  2. ホタテのキーウィソース和え
  3. かぼちゃの挽肉寄せ揚げ
  4. 切干大根中華風サラダ
  5. 牛しゃぶ
  6. つぼ煮
    • 「つぼ煮」は地元芦峅寺(アシクラジ)に伝わる立山信仰にゆかりのある郷土料理、宿坊で出されていた。天日干ししたコゴミを水でふっくらと戻し、里芋、人参などと一緒に油で炒め、醤油味のだし汁でやさしく仕上げたもの。
  • コースタイム(着/発)
    起床(5:30)――朝食(6:30)――富山駅前(7:15/7:45)――(登山バス)――室堂バスターミナル(10:10/10:30)――(登山開始)――一ノ越避難小屋(11:50/昼食/12:10)――雄山山頂(13:30/13:50)――一ノ越避難小屋(14:40)――室堂バスターミナル(15:40/16:10)――みくりが池温泉(16:40/宿泊)

 

Tateyama_19.JPG【第3日】8月6日(金) 立山連峰縦走コース

(縦走コース記録担当 勝巳)

 「花と、雪渓、展望の稜線」には違いないが、けっこうな歩きでがある。出来るだけ早く温泉を出発して、帰着を夕立の来る3時までと計画し、朝食は最も早い一番の6時。食後、出来るだけ早く出発することとする。途 Tateyama_20.JPG中まで行動を共にするため全員集合を待つが、6時40分縦走組は見切り出発。

 ゆっくりと「今日はガスが多いから立ち止まるな」という、日本語と、中国語と、英語のアナウスを聞きながら噴煙盛んな地獄谷を経由し、カラフルなテント場を過ぎる頃は、すっかり日が昇っている。雷鳥平の称名川の細い木橋を渡り、右の剣御前小屋に直 Tateyama_21.JPG登する雷鳥坂を見送り、いよいよ登りに取りつく。新室堂乗越しまでの気持ちよい木道と、周辺の花畑がどこまでも続き、今更のように立山の花の多さに驚く。ゆるいのぼりをひと登りして、新室堂乗越着。

 稜線の向こう側の風景が広がる、奥大日岳は思ったより平凡。期待しすぎだった。剣は少し雲がかかっている。これからこれらの山は嫌というほど見せつけるはずだから Tateyama_22.JPGと休憩も軽く過ごす。後発のトレッキング組がはるか下に見え始めるころ、さすがの高所でも暑さが厳しく半袖でも汗をかく。サングラスは掛けているが陽に焼けることだろう。増してきた暑さに加え、急峻な別山までの登りは泣き言を言いたくなる。ただひたすら、足元を見つめ高度を稼ぐが、ふと立ち止まると何とも言えぬそよ風が吹く。足元には高山植物。その筋の人は泣いて喜ぶだろう。当然だが、この辺が丹沢と大いに違う。

Tateyama_23.JPG 伊久枝さんが引き返すので、孝儀さんが同行する。ここで、メンバーは8人。さらに、延々と思える急坂を黙々とひたすら登る。やっと剣御前小屋が見えてくる頃、これから行く立山縦走路が多くの雪渓を従えて俯瞰できる。別山乗越の小屋で、十分な水補給。2ml入りが950円と安い。ちなみに、500mlは一本400円だから半額である。親切な山小屋の方だが、書いてあることはすごい。「小屋の中での休憩は禁止」。雨が降ってもだろうか。

Tateyama_24.JPG 左に剣への道を分け更に登ると、右に山頂を避ける巻き道を送り、やっと別山山頂である。のんべりした、牧歌的ですらある広い山頂が小気味よい夏の風の中にある。ここからの立山の山々は相当な距離と、大いなるでこぼこ峰で、あんな所まで行くのかと内心ガックリする。でも、今まで、見かけほど困難な山には出会ったことが無い。近くに行けば絶対に道はあるし、結構知らぬ間に到達でき、「怖れることはない人生の様なもの」などと悟った様な気分になる。

Tateyama_25.JPG 登れば下るのが常とはいえ、別山からの下りは、まことに楽ではない、そこを反対から重い荷物を背負って登ってくる人たちがいる。こんな坂、良く登ってきたもんだと感心するが、さっきまでの自分たちの姿だ。真砂乗越を過ぎるころから、大きな雪渓が左の真砂沢に流れ込んでいる。どう見ても氷河の跡だが、初めて見つかった日本の氷河の跡は、ここから少し先の右側にある山 Tateyama_26.JPG崎カール。左に25分の内蔵助山荘は、途中までの道が崩壊して営業していない。

 相変わらずの内蔵助谷の万年雪渓は角度もあり、下は雲に隠れて一層足がすくむ。その代り、涼しさは天下一。雪の上を渡る風、遠い夏の白雲、うち続くががたる岩山、延々と続く尾根道。真砂岳からの「大走り」下山道は2時間弱で雷鳥沢に至る。この Tateyama_27.JPG縦走の最後の逃げ道だ。まだ、天気はよさそうだし、時間も遅れていないし、メンバー全員の体調も持ちそうだし、雷鳴も聞こえないので、このまま、縦走を続行する。

 やがて富士の折立だが、この登りは楽ではない。滑りやすい小岩ザレ場をここが正念場と云い聞かせて、ただ、ただ、足元を見て黙々と登る。メンバーの話し声もしなくなった。でも、昨日、雄山まで来ているの で、なんだかだいぶ近くに帰って来たような気がする。折立とはまさに名前の通り、岩場が直立している。なんだか今にも崩れそうに見えるが、案外しっかりしているようだ。

 急な下りの先に、縦走中天候が悪ければ逃げ込む無人の休憩所がはるか下に見えている。立派な小屋だ。その先は、主峰、大汝山だ。ここまでくれば縦走は完成したも同然と思いきや、そうはいかないのが山登りだ。細かい上り下りが相変わらず続く。

 この大汝山頂は、いわゆる「立山」の最高峰3015mである。ここに立つと、後ろ立山連峰を背にして黒部湖が見える。隣の雄山山頂での神主のお払いの太鼓の音がやけに大きく聞こえてくる。記念写真にはもってこいの場所である。信仰の山の姿が浮かび上がる。雄山に至っては、 Tateyama_29.JPG山頂は、500円のお祓いをして登る別天地だ。雄山神社は不自然なくらいてっぺんの岩にしがみついている。

 雄山は多くの人がいて、地元の中学生の団体が多い。ザレ気味の下山道だが、あまりに多くの人が歩いたためか、道に疲れが出ていて小石が滑りやすく快適な下りとは言えない。ここまで来ると、韓国人の団体や、集団登山の学生、とすれ違う人も千差万別。運動靴もいれば、サンダルすらいる。大丈夫なのかと心配になる。

Tateyama_30.JPG 一ノ越の山荘前はかなり広いのに、人がごった返している。少し下ってから休憩にする。室堂平の全景が見える。振り返る縦走路が一部雲の中だがそのためか、一層凄惨な岩山の様相を呈している。見渡す限りの雪渓は北海道の大雪山に比べても遜色がない。

 縦走が終わったのかどうか判然としない一ノ越乗越からの岩畳の幅広い道は歩きにくい。いくつかの小さな雪渓を横切るが、 Tateyama_31.JPGその冷たい風に生き返る。遠くに、みどりが池、みくりが池が見えているがなかなか近づかない。ここまでくればさっきからの黒い雲もどうでもない。温泉に入りたい、早く入りたい。明日は下山だけだから、今日はビールで乾杯しよう。今朝出発した、みくりが池の周りの雪渓もなんだか懐かしい。メンバーが達成した縦走の充実感、達成感は大きなものだ。ハイマツと雪渓と、お花畑の立山縦走は苦労する価値がある。

  • コース(着/発) 徒歩約9時間
    みくりが池温泉(/6:40)――地獄谷(7:00)――雷鳥沢テント村――称名川越え(7:20)――新室堂乗越(8:00)――剣御前小屋(9:40)――別山(10:30)――真砂乗越――真砂岳(11:00)――富士の折立(12:50)――無人小屋(13:00)――大汝山(13:10)――雄山(13:40)――一ノ越(14:20)――祓堂(14:40)――みくりが池温泉(16:00/)
  • 縦走参加者
    勝巳(リーダー)、才美、昭、善右衛門、邦子、幸子、憲治、貞子、孝儀、伊久枝、以上10名
  • 宿泊関係
    「みくりが池温泉」Tel:076?465-4595、一泊8920円
    2段ベット。8人収容部屋。朝食バイキング6時から。夕食5時半、7時等区分、料理満足。温泉ほぼ24時間入浴可能、石鹸、シャンプーあり、従業員親切。有能。寝具清潔、携帯可能、昼弁当握り3個、850円。トイレ水洗、寝巻なし。

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【第3日】8月6日(金) 散策コース

(散策組記録担当 紘正)

室堂乗越から剣岳遥拝

 昨日、立山高原バスを降りて、雄山に向かって歩き始めた一帯は、潅木の緑色が濃く、鮮やかな山肌とモノクロームの峰頭が幾重にも連なって、日本にもこんな景色が在るのかと思うほど雄大であった。

Tateyama_32.JPG 唯一の難点は、室堂平からは別山にかくれて剣岳が見えない事だった。おそらく、登山組みは、別山から剣岳の東面を仰ぎ見る事であろう・・・。7時間の縦走は無理であっても、出来る限りの感動を共有したい、と各人の内に秘めた『剣岳遥拝』が、散策組のささやかな目的となった。

 この朝、頭上は真青で、室堂平も雷鳥平も朝の光に照らされていたが、立山の稜線には広がりを持った重い雲が居座っていた。

Tateyama_33.JPG 雷鳥平のキャンプ場までは、立山を縦走する登山組の後姿が見え隠れする位置につけていたが、称名川渡橋を越えてからは、数分の内に、登山組の姿は我々の視界から消えた。称名川を離れ、新室堂乗越に向かう木道に取り付くと、上昇気流が称名川の冷気を含みながら、涼しい風となって流れてきた。しばらくは辛い登りであったが黙々と登って行く。峠に近くなって、右方向の急峻な雷鳥沢を見上げると、はるか上の方から「ヤッホー」と叫ぶ声が聞こえた。肉眼では定かでないが、小野さんが双眼鏡で眺めると、別山乗越に向かう登路に、我が登山組が休んでいるらしい。時に9時過ぎ。

  9時30分頃、新室堂乗越の峠に立って、「剣岳は何処」と見渡すも低木と笹の原の向こうは、日の出と共に発生した霧に覆われていた。それでも『剣岳』を仰ぎ見たい一心で、尾根道を大日岳の方向へと移動して行く。行く先には、2511mピーク(カガミ谷乗越)や、直ぐ右奥に奥大日岳があった。

Tateyama_35.JPG 孝儀さん、伊久枝さんが合流して10分も歩いた頃、毛勝谷や大日谷側の視界を遮っていた笹の原が途切れて、台地(室堂乗越)に出た。その瞬間を見計らったように、スーっと、ガスが流れて、剣岳西南面の威容が現れた。向かって右から、前剣・剣岳・八峰?の黒い岩峰が天を衝いていた。そして早月尾根が西の方向に長く延びている。一瞬の幸運を逃すまいと、遥拝をすることも忘れてカメラを構えた。そして、安易に登攀を考えた事もある自分の不明を恥じる神々しさを感じながら、改めて遥拝をした。

Tateyama_36.JPG  9人の満足した輝かしい姿がカメラに収まった事を見届けたように、剣岳はまもなく霧に覆われだした・・・。

 復路は、全く快調、足下に清風が立つ余裕があったので、話題は稜線を行く登山組8人の動静に集中した。龍太さんが、双眼鏡を覗いては「今、鞍部を歩いている。あ!休んだ。折立の急登りに取り付いた・・・」と言う度に、米粒ほどの人影を、皆で探した。

 この後、高価なコーヒーやビーフシチューを食し、玉殿の岩屋を見て、15時にみくりが池温泉に帰着した。

  • コースタイム(推定の略時間、着/発)
    みくりが池温泉(/7:00)――称名川渡橋(8:00)――新室堂乗越(9:30)――室堂乗越(10:00)――雷鳥平キャンプ場(11:30)――立山ホテル(13:00)――玉殿岩屋(14:30)――みくりが池温泉(15:00/)
  • 参加者:孝儀(室堂乗越より合流)、多摩江、洋子、恵美子、龍太、美保、伊久枝(室堂乗越より合流)文子、紘正(リーダー、記録)

 

【第4日】8月7日(土) 晴れ

朝6時朝食。7時出発。7時45分トロリーバス、ケーブル等経由――黒部湖――扇沢――大町温泉郷下車(温泉)――(タクシー)――信濃大町駅――松本駅――(特急かいじ30号)――八王子駅(解散)――町田駅着20時ごろ。

  • 参加者
    孝儀、多摩江、洋子、善右衛門、恵美子、龍太、美保、勝巳、才美、伊久枝、紘正、文子、邦子、憲治、貞子、昭、幸子、以上17名
  • 総費用 約5万円(みくりが池2泊、富山1泊、観光バス、登山バス、ケーブル等すべて含むHIS扱い)

 

(リーダー総括記録 勝巳)

  1. 事前の準備を万全を期すために、4か月前からの「みくりが池温泉」の予約や、HISでの交通手段の確保、複雑な費用管理に安齋さん、小池さん、のお力をいただいた。17名にもなると、旅行社並みの体制が必要で、参加者の協力が欠かせない。今回は、この夏の山行計画の中心的なもので、会員が誰でも参加できるよう、縦走、散策のコースとし、散策トレッキングは小池さんが担当した。
  2. 山は何といっても、天気次第だ。幸い、これ以上の天気は望めないほどで、終日雪渓は輝いていたし、高山植物は、あまりに多く、しまいには雑草並みに感じ始める始末だ。それにしても、やはり北アルプスの立山は花が美しい。
  3. 宿泊は、温泉と云っても高級な「山小屋」に過ぎず旅館とは異なる。寝場所の良しあし等は、他人を思いやる気持ちで解決しよう。わずか2日泊まるだけのこと。何事も経験だ。本当の山小屋に泊まり、最盛期の混雑を経験した方は理解できることだ。
  4. 登山である限り団体行動は避けられない。自分の好きな行動をとって、もし事故が発生すれば、如何に自己責任とは云え、リーダーや、関係者の自責の念は重い。その辺の事情は参加者の誰もが理解してほしい、どうしても団体行動が嫌なら、気楽な単独登山をお勧めする。健ハイといえ、観光旅行と基本的に違いがあるのはおわかりいただきたい。
  5. 登山では特に、早朝の出発に遅れることは全員に迷惑を及ぼす。折角早く起きて、他人が寝ている間にトイレに行って十分余裕を見て準備した人も、何のことはない、遅れる人のために待ちぼうけをして、全て水の泡。山は非日常の世界。自分の行動を他人に合わせることで成り立つ世界だ。5分前の精神は尊びたい。
  6. 縦走組みの、あの高所での8時間を越す長時間のアルバイト。散策組みの6時間に及ぶトレキングは年齢からすれば大したものだが、過去の若き日に{?}踏み越えてきたハードな山行からすると、体力、気力の低下傾向は誰の目のにも明白。さて、どうするか。知恵を絞るタイミングに来ている。
  • なにはともあれ、事故もなく、病人も怪我人もなく、誰もがそれなりの立山を満喫した実感があろう。いろいろ周辺の事情、環境を鑑みれば、今後は簡単に出来ることではない。人によっては人生のエポックになりうるものだ。それでこそ、意味がある。
  • 夏の北アルプスの寒いくらいの風と、雲と空と、雪渓と花々の思い出だけを残そう。

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このページは、akirafが2010年8月10日 11:54に書いたブログ記事です。

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