イノシシの話(5000万年前から変わらない生きた化石)

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 (安全対策担当 勝巳)

 2009年2月の月例会で説明したものです。

  1. 農民との攻防
    縄文時代の狩猟生活の対象動物はイノシシ。採集対象はどんぐり。米の栽培はイノシシの生息域を犯したため、イノシシの耕地侵入が始まり、農民との攻防。
  2. 猪害防除の方法
    • 「せん滅」
      対馬の例。1700年から9年間に8万頭。農閑期に鉄砲で。延べ23万人、食糧2,500トン、猟犬22,00頭。費用は藩負担。
    • 「捕獲」
      シシとは肉のこと。縄文から肉を食べ、肝を薬にし、毛皮、牙、骨を利用。仏教伝来で肉食禁止令(天武天皇)。狩猟は明治まで衰退。
    • 「防除」>br /> 限られた資金、労力、資材で農民の最大の問題。シシ追いは、収獲期の夜中に耕地に農民が小屋を設けて、大声を出し、鳴子やシシ笛で音を立て板を叩いて追い払った。夜中じゅう騒ぐので、畑での騒ぎは中世では相当なもの。居眠りをすれば侵入され、翌日の労働にも影響する。農民の負担は過酷。現代でもテープを利用しているが、人間がいなければ効果はない。臭いに敏感。案山子を立て人間の汗のにおいや髪の毛を燃やして利用した。(案山子はそもそも人間の異臭をカガスことからこの名前がある)古タイヤを燃やすことはダイオキシンの問題あり。
    • 「シシ垣」
      効果的。土塁。木製の柵の場合。能登半島1780年の例、1800mのシシ垣に松杭22,000本、人足700人を要する。2?3年しかもたず、農民の負担は甚大。石の場合、高さ2m、長大な石垣は谷川を越え、木戸を設け、「万里の長城」と呼ばれてきた。近くには赤城南麓、霞ヶ浦、榛名山東麓、利根川上流、秩父大滝村、八ヶ岳南麓、等。空白地帯は、北海道、東北、北陸の深雪地帯。現代ではトタン棚高さ65cmでかなり有効だが、130cmまで飛び越える。電気棚。
    • 「鉄砲」
      脅し鉄砲、鉄砲は武具ではなく近世は農具。弾を込めない脅し火縄銃を幕府は無税で農民に貸与した。農民は厳しい取り締まりをくぐり、闇の鉄砲も所持し、弾を込めて使っていた。硝煙の臭いが有効。明治3年、鉄砲の数150万丁。武士より農民が所持。四国の山中にはすべての戸に鉄砲を所持していた。吾川村、ゆすはら村、佐賀県など九州全域、宇和島、鉄砲を持つ郷士(一領具足など)外様大名のもと農民生活をする実質的な兵力。鉄砲の訓練をし、イノシシの害を防ぐ名目での領主の力を強化、西南戦争でこれら郷士、農民を利用した官軍は勝利する。
    • 「守り札」
      困り果てた農民が使用。神頼み。イノシシを捕食するので神としてオオカミを祀る。三峰神社ほか全国に、守り札は耕地のまわりにやたらと張ったので有効。イノシシと共生するための垣根を作ることが農民の目的。飛騨で1800年大雪のためイノシシが数千頭餓死したがその供養塔がある。
    • 「飢餓とイノシシ」
      八戸藩、1750年イノシシが作物を食い荒らし、凶作で3,000人の餓死者。これは、藩による増税――農民は山を開き、焼畑で換金可能な大豆を植える――焼畑は数年で耕作をやめ――耕地の後にワラビ、クズが繁殖――地下茎にでんぷんの栄養豊富――イノシシの異常繁殖――作物を荒らす――凶作――飢饉発生。
  3. 生態
    本来は昼間行動。人間を恐れての夜行性。一日の3分の2は寝ている。オス100kg、寿命10--20年。雑食だが植物中心。ドングリ、ねずみ、へび、ミミズ、沢がに取りは、わさび田を荒らす。サツマイモは集めて貯蓄する。成長が早く2歳で初産。2?8頭を生む。子は生後3か月まで「ウリボウ」。母親と5?6頭の子供で群れをつくる。母親は子育てをあまりしない。次の出産を大切にする。オスは単独。草で巣を作る。ヌタ場で汗腺のない体を冷やし、寄生虫を取る。他のイノシシとのコミュニケーションの場所。海も泳ぎ渡る。足が短いので深い雪に弱く、30cmで積雪期間70日を超えると生息できない。「猪突猛進」はウソ。めったに走らない。パニックを起こして人間から逃げるときだけ。移動はけもの道が決まっている。警戒心が強く、人にめったに出会わない。春は出産のため、前年の子との子離れの季節。数を数えられる。学習能力・記憶力あり。色認識する。1歳でも60cmは飛べる。130cmも可能。助走せずに30cmの近くから飛ぶ。鼻で60kgを持ち上げる。
  4. イノシシに出くわしたら
    イノシシは普通逃げる。親が「ウリボウ」を連れているときは、ゆっくりその場を離れる。急に走り出し背中を見せると襲ってくる。立てがみを立て、威嚇しているとき、シュー、カッカッカ、クチャクチャ言っているときは危険。
  5. 「嫁に行くならイノシシのいないところ」
    交通の不便さよりも、イノシシの害の深刻さ、防御の過酷な労働を言っている。シカは植林食害、イノシシは人の食べるものを食害する。耕作放棄地の増加がイノシシを増やしているため、2000年には正確な把握は出来ていないが、数十万頭がいて(クマは2万頭)そのうちの12万頭が1年で捕獲され、日本最大の捕獲動物。農耕民族に嫌われる。民話もキツネやタヌキ、ウサギがほとんど。イノシシの話はほとんどない。

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    このページは、akirafが2009年3月 6日 09:55に書いたブログ記事です。

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