No.211 雨飾山(1963m)山行(2008.7.14-16)

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Amakazari_2.jpg(記録担当 勝巳)

【第1日記録】

 ハプニング発生で家にいた邦子さんに世話になる。非常時の連絡担当者の指定が必要だ。宿までのバスは貸し切り状態。部屋に荷物を置き昼食。手ぶらで、舗装道路を鎌池まで1時間の散歩。このあたりはさすがに山が深い。聞いたこともない小鳥の声がそれを物語っている。

 池に着くや否や、雷雨。たった一軒のおばあさんが管理する村営「ブナ林亭」に駆け込み雨のやむのを待つ。鎌池は周囲30分程度だが美しく森を映している。静かだ。紅葉の頃は写真を撮りに押しかけるという。帰りは自動車道を避けて山道をキャンプ場近くまで歩く。

 宿につき温泉。熱い。源泉は56,7度もあり、宿から50mの村営の「無料露天風呂」は熱くて足も入れない。水で薄めるのだが、温泉が24時間豊かに流れ出ている。もったいない気がしないでもない。食事はあまり期待しないほうがいい。この程度だろうという期待をかなえてくれた。でも、宿全体は古いがよく手入れしている。8時頃には寝てしまったようだ。雨の音がしていた。

【第2日記録】

Amakazari_1.jpg 朝4時起床、身支度をして4時50分には宿の車で出発。朝飯を登山口で済ませ、昼飯は弁当。登山口に1台だけ駐車していたのは札幌から車で50日間も一人で「山に登っている」というおじさん、昨日は車で寝た、これから雨飾に登るという。

 道は沢沿いに木道を快適に始まる。すぐにジグザグののぼりを経てブナの森に入った。雪深いこのあたりのブナはかなりの大木でもみんな斜面にそって曲がっている。相当な雪の重みに堪えているのだろう。ここのブナ林は見事だ。本物を久しぶりに見た。登山道にはいたるところに道標があり、道幅も広く手入れされている。百名山を観光資源にする行政の努力の証だろう。頂上まで400m単位で11に区分した看板が11分の1から始まっていて何かと便利だ。

 荒菅沢から初めてまともに雨飾山が、雪渓と巨大な岩場を従えてそそり立っているのが拝める。あそこまで登るのかという内心を隠してまさに拝めるのだ。足元は雪渓の冷風と雪解けの沢の音。怖いくらいな「ふとんびし」の一枚岩を両側にして寡黙に雲に出ては消えている。この山のハイライトの風景だ。ここで登山が終わればこんないい山はないのだが。これからが本番の登山。

Amakazari_3.jpg 急峻な連続。天気も良くなり、森林限界を超えたのか、やたらに暑い。水は補給できなかったので、ケチレとの指示が出ている。汗は遠慮なく出っぱなし。いい加減音を上げようとしていたら、すたすたとおじさん2人が登ってきた。聞けばこれから山中に一泊して金山まわりのコースの草刈りと整備をするという。簡単に金山まわりというがこのきつい登り道を登り切ってから右に5時間はかかる山。簡単には足を踏み入れない山だ。そこに行くのに長靴。しかもテントなど持たない。草刈り機とそのガソリン、それに水、食糧、等大変な重量だろう。飄々として無駄口を利かない。本物の山男に出会った。

 やっと、尾根に這い出る。ここからはお花畑。

 あの山はなんだ。まさか焼山ではないだろうなという思いを見事裏切り、その焼山。火打も見える。天狗原も。何という風景だ。妙高側から見るのと全く違う。若いころから乙見峠の先にどんな道があるのかと憧れていたがそのすべてを見せているではないか。あの山の奥に「ニグロ川」がある。どうしてそんな名前なのだ。昔の疑問が甦る。ここは百名山などと有名になりすぎて軽く見られているようだ。違う。本当の姿は裏金山や、名もないピークがおりなす交響曲を聞かねばいけないのだ。

Amakazari_4.jpg お花畑を満喫し、巨大すぎる「雨飾温泉」への分岐標識を送り、最後の急登後山頂に至る。ふたつのピークで右に石仏、その先は雲と日本海が丸い。左の山頂は360度の展望。戸隠も特徴ある姿を見せている。そよ風だ。晴れている。北アルプスの雪山が雲に隠れては顔を出す。絶壁の向こう、足元はどこまでも続く森林。さすがにここまで来ると名山に出会った気がする。名前にあこがれる人もいるだろうが、そもそも山頂が二つあって当初両飾山としていたのが誤字から雨になったというが何とも夢がない。

 この山は何と言われようと名山だ。百名山などとマスコミ受けする軽薄な評価は無用だ。風格と言い、登る困難さといい、周囲の山並みと言い、日本の中の位置といい、森といい、雪渓といい、冬の豪雪、秋の紅葉、春の新緑、夏の冷風、沢、巨岩、鳥、花、ブナの原生林、日本海からの強風、山の深さ、ふもとの鎌池、湿原、温泉、全部あるのだから。この山域は未開発の所が多い。奥行ある山登りをしたい人にはこたえられないに違いない。テントと、水を背負っての金山や天狗原には別世界があるはずだ。

 頂上を降りて見晴らしと風通しの良いお花畑のピークで休憩。体が山に融け込む。でも、いつまでも気分爽快とはいかない。例の急登を下るからだ。慎重にゆっくりと声をかけながら下ること2時間弱で全員事故もなく、やっと、荒菅沢に着く。もう、皆の持参した水はない。何としても水をと善さんが先頭を切る。雪庇のない適当なところを探して細心の注意を払い水場にやっと辿り着く。冷たい清水が無尽蔵に流れている。水はありがたい。たっぷり補給して雪渓の冷気の中で30分は休憩する。

 ここからは暑さも、危険もない森の道だ。口も軽くなり、今更のようにブナの森の見事さに見ほれる。沢音が高くなり木道に出た。もう20分で登山口だ。あとは宿に電話すれば迎えが来る。そしたら温泉だ。ビールだ。この充実感は何物にも代えがたい。 宿は今日は我々5人だけ。26連泊した工事関係者2人が急きょ愛媛に帰ったので、準備したおかずも食卓に並んで昨日より豪華だ。

 夕方、何気なく外で涼んでいると狐が出てきた。行ったり来たりしていたが私が邪魔したようで戻ってしまった。ここは深い山の中なのだ。夕暮れの森は引き込まれそうな黒い緑の神秘だ。

 登山は、いつも彼らにほんの端をかすめさせてもらっているのだろう。

 

【今回の特徴】

  1. 一泊で糸魚川方面に抜ける通常のコースを、2泊同じ温泉で往復コースにし軽量に徹したこと。また参加者5人の年齢も考慮して、早朝出発、早めの帰着、宿の車での送迎、特急座席指定利用のほか、20%程度の時間的余裕計画で行動したこと。
  2. 天候は安定し、メインの雨飾山は天気に恵まれたこと。
  3. 登りの荒菅沢で水補給ができなかった(下り時には必死で確保した)。今年は残雪が多く、雪庇が危険で水場に近寄れなかったこと。この時期の雪渓での水補給は注意が必要。
  4. 7月14日は、鎌池散策で深い自然林を優雅に逍遥したこと。
  5. 雨飾山の旅行社のツアーはかなり事故を起こしているらしい。7組中4組で事故が発生しているとのこと。百名山ツアーや、無責任なTV番組の責任が大きい。金を出せば誰でもが行ける山ではない。周到な計画と訓練、メンバーの選定を必要とする。
  • 日時 2008年7月14日(月)--16日(水) 2泊3日
  • 集合 あずさ3号車中にて合流
  • コースタイム(着/発)
    • 【第1日】(7月14日)徒歩3時間 午後2時ごろ激しい雷雨、のち曇り
      八王子(/8:03)......(あずさ3号)......南小谷(11:41/11:50)......(バス)......小谷温泉「雨飾荘」(12:30/)......(荷物を預け、鎌池散策)......雨飾荘 (15:30/温泉)......夕食(18:00)......宿泊
      宿泊先 村営「雨飾荘」8,025円 Tel 0261-85-1607 2部屋予約
    • 【第2日】(7月15日)徒歩10時間 曇りのち快晴
      雨飾荘(/4:50)......(宿の車)......登山口キャンプ場(/5:00)......木道の沢沿いの道......ジグザグの登り開始(5:30)......ブナの森(6:00)......荒菅沢(7:30)......厳しい登り(9:00)......尾根、しげ倉尾根を経て金山方面分岐......雨飾温泉分岐(9:10)......雨飾山頂(10:10)......金山分岐(11:00)......荒菅沢(12:30)......ジグザグの登り開始地点(14:10)......登山口(14:50)......(宿の車)......雨飾荘(宿泊)
    • 【第3日】(7月16日)晴れ
      雨飾荘(/8:35)......(バス)......南小谷(9:20/9:40)......松本(/12:10)......八王子......町田(16:30)
  • 参加者
    善右衛門、勝巳、才美、伊久枝、幸子、以上計5名

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コメント(1)

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雨飾山は、そんなに魅力的な、素敵な、風格のあるやまですか・・・・・・原稿を読んでいて、投稿者のこの山への強い思い入れを感じました。是非、一度登ってみたいものです。
隣で、興味深そうに見ている主人に、温泉のお湯が熱すぎて足もつけられないと書いてあると言ったら、大笑いしていました。いつも、日本の温泉の話をすると、日本人はものすごい熱いお湯に入ると目を丸くして友達に話しているのですが、日本人さえも足がつけられないとはよほど熱かったのだろうと!! ハハハ
その後、二枚目の写真を拡大すると、『なんだ、このプロテクションは?!』と、アランは恩田さんの網付き帽子に目が釘付けになっていました。こんな帽子は見た事がないと何でも新しく作り出す日本の商売精神に感服している様子でした。 しかし、これは虫除けですか?日焼け防止ですか?
最後に、そんな深い山の中で26連泊もして働いていた愛媛の工事関係者・・・・仕事とはいえ、うらやましいですね! ハハハ

本当に、たのしい記録文、ありがとうございました。 ゆきより

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このページは、akirafが2008年8月 6日 04:41に書いたブログ記事です。

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