No.155 編笠山・西岳・権現岳山行記録(2006.8.3-4)

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Amigasa_1.jpg皇太子も泊まった親切で清潔な青年小屋

【第1日】

(記録担当 孝儀)

 小生は、久しぶりの2,500m級の山小屋泊山行。前日は周到準備、1/25,000地形図によるコース確認、懐中電灯、非常食・医薬品・保険証等々の持物確認を行った(チョット慎重カナ?)

 8月3日登山客で混む「特急スーパーあずさ1号」に乗込む。茅ヶ岳は霧で見えず。小淵沢駅で全員が集合。予約のタクシーに乗り、9時15分「編笠山登山口:観音平」に到着。

 リーダー紘正さんより登山ルートと行程説明後、各自準備体操と身支度を整え、9時35分に登山開始。

Amigasa_3.jpg 比較的広い登山道はゴツゴツした小石と自然林の生命力旺盛な木々の根が絡み合い、足元に神経を要する道でもあった。森の中は、曇りなれども蒸し暑い。暫く登ると、汗が一気に出る。30分ほど登り1,745m地点にて小休止し、喉を潤し暑さと日焼け対策をした。 地形は1/25,000の地図通り、右側が平坦で大きい岩石が点在し、左側が急斜面沢(?)に位置する登山道で、雑木林の中で快く鳥が囀り、青、黄、紫、白...の野草、キノコが目に映る。10時33分雲海展望台を通過するが、ガスで眺望ゼロ。ひたすら足元に注意し、1,980m地点にて15分ほど小休止。視界は唯ガスのみ。

 11時15分出発、岩がゴツゴツした急坂、11時28分押手川分岐通過、アブが寄ってくる。登りが段々厳しく、ザックが重くなる。11時45分、2,160m地点にて昼食をとる。

 腹満たされれば注意力散漫の恐れで、ひたすら真剣に急坂を登る。2,270m地点にて立ち休止、そして2,320mにて10分間の小休止。

 休憩中、スイストレッキングも良いが、今日の山は登り/下りが適度にあり魅力的だ。しかし、山はアプローチが長く、山頂までの最終400mの急登ではバテ気味。だが、あきらさんは元気印。何と、スイストレッキング後、3回 金時山へ。この急登パターンは金時山に似ているとの事。やはり、常日頃の心構えの重要さを感じ、小生多々反省。

 急登再開、岩場あり、ハシゴあり、あぁ? コンパスが足りない。慎重に、更に慎重に登り、13時20分 編笠山々頂着。

 普段の素行(品行)が良いのか、なんと、我々が山頂につくと、霧は切れ、雲が去り、八ケ岳連峰(赤岳、阿弥陀岳)、西岳、権現山が迫り、遠くには南アルプス、更に蓼科が望まれる。

 記念撮影後、ゴロゴロする巨石を飛び渡り25分ほどで「青年小屋」に到着。

 青年小屋より望む編笠山は正に編笠の形だ。

 20分ほど青年小屋にて、西岳への荷物入替を行った。

 西岳へ向い5分も歩くと水飲み場「乙女の水」。非常に冷たく、スッキリ系の水。水を飲むと、小生睡魔を感じ急遽、此れから先の「西岳記録」は、才美さんにお願いして、小屋にひき返し、昼寝へと予定変更。ごめんなさい!!!

 16時50分「西岳」より小屋に帰着。

 山小屋の美しい女性より、我々にもう1部屋用意できるとの事。有難い、ありがたい。早速、女性が指定された部屋に移る。この部屋は、昨年9月 皇太子の編笠山ご来臨時に宿泊した部屋だが、眺望は素晴らしい。

(この項才美記)

 西岳は不遇の山である。八ヶ岳の南に訪れる人とてなく孤高の高嶺である。周囲の競い合う高名な山々に隠れひっそりと自己主張の片鱗もなく佇んでいる。それでいて姿は優雅で優しさに満ちている。山麓からの原生林は全山を囲み、この山に登る唯一とも思える登山道を深く隠している。数年前の5月、森を分けてこの山を訪ねたことがある。新緑と爽やかな薫風に、遠い渓音が終始道ずれになった。そのときもそうだったが、山頂はこじんまりした小さな岩と草地で、古い信仰の山らしく風に石碑が転がっているのみだった。今度は想像もできない高山植物の群落に出会った。花はこの山に相応しく彩り豊かで消え入りそうに可憐で、山頂の風に微かに揺れ花の声すら聞こえた。この世は忘れられて一人咲き、短い盛りを散っていく無数の花に満ちているのだろう。

 この道は青年小屋からほぼ一時間。余分な荷物を小屋に置いて快適な木漏れ日の森をゆるく上下する道だ。清流「乙女の水」は常に摂氏4度。8月の陽もここでは涼しい。森はあくまでも深く、シラビソの香が満ち、名も知れぬ茸が苔むした倒木に生えている。道は夏草に覆われることも無く、堆積した落ち葉に弾み、くねくねと森を分けて深く続いていた。

 8月のこの時期、八ヶ岳にこんな山がある。大挙し登る有名な山と、このように静寂な無名の名山がある。山に求めるものを見失わないようあらためて思った。

 夕食までの時間を屋外のテーブルにて、夕陽と編笠山を見ながら才美さんの誕生を祝いながら歓談。

 クラシックがBGMで流れるダイニングで、暖かい、美味しく夕食。この山小屋は、皇太子が、健ハイも泊まったことで証明できるAクラスの小屋として推奨できる。

 夕食後、左弦の月を窓越しに見え、ストーブとコタツの部屋にて談笑し、20時に就寝した。

 

【第2日】

Amigasa_4.jpg(記録担当 勝巳)

 この小屋は親切で、清潔だ。遠くからトタン屋根が錆びているのを見て勝手に内容を想像したが間違いだった。外形で判断しては誤る。近くに清水が湧き、大きなテント場があり全体に広々としている。宿泊客も少なく、二部屋を借り切る。

 早朝3時30分、星を眺め天気を確認してから、4時には準備に取り掛かる。十分満足な朝食の後、富士山の遠景に快晴の朝を出発。森林限界を出ているこのあたりは景色もよく快適だ。狼煙台までは普通の山道だったが先は岩場の連続。小屋から見上げていたスイスの針峰のような山が行く手をふさいでいる。地図上はたいした印も無いのになんたる荘厳さ。あれをまともに超えるのは不可能と思ったがやはり巻道。当然のこと崖を横切る鎖場の連続。東擬宝珠(ギボウシ)を越え、権現小屋がまじかに見えてくると話し声も途絶える本格的な岩場。鎖につかまり慎重に擬宝珠を巻く。着いたところが、「権現小屋」。垢じみたヒゲ面の若者が一人小屋の中でヘッドランプをつけている。泊まる人もいないようだ。水は天水。小屋の周囲も山崩れが始まっている。小屋の中から、屋根越しに空も見える。気の毒になり、少しでも支援できればと、いりもしないジュースなどを買い求める。山頂はそこから10分とかからない。記念写真も全員で撮れない狭い岩場のてっぺんが山頂だ。景色は、穂高、槍、赤岳、阿弥陀岳、蓼科、北、仙丈、昨日の編笠などより取りみどりだ。

 山頂から稜線を急に下り若干の登りの後に三ツ頭に着く。三ツ頭を過ぎて5分もしないところに天女山への分岐を左に見る。このあたりからは編笠山が少し形を変えて深い峪越しに眺められる。下山時に苦労した大きな岩のゴーロ状がほとんど編笠山を囲むように広がっている。スイスなら少なくても鉄製の歩道にしてしまうところだ。きつい登りを早朝にこなしておけばどんなに日中暑くなっても何とか耐えられる。そのために山ではすこしでも早く小屋を出発しなければならない。

 ここからが本格的な下山。連続3時間30分はかかるだろう。ほとんど森の中で夏の太陽は避けられる。しかし、油断は禁物。どんな危険が待ち伏せているか分からない。水をタップリ持って、緊張感を持続させ、ともかく、つったり、膝の痛みなどの訴えの無いようにゆっくり、しかも適当な休憩を取りながら(いわゆるダマシダマシ)下る以外に無い。

 木戸口公園などという変な名前の場所に出た。もとよりこんな山奥に公園があるはずが無い。名称は不思議なものだ。10分もすると広場に出た。ヘリポートだそうだがまさか本当のヘリポートだとは思えない。こんなところに作って何に利用できるのか、少し尾根が広いので例によって気まぐれな名付けだろう。それにしてはヘリポートとは新しい名前にしたものだ。普通はこのような山中の広場は「天狗の相撲場」か「伐採小屋跡」などが相場だ。

Amigasa_5.jpg 道は単調に、淡々と見事な植林の森の中を下る。下る。ひたすら。この道は30年も前は八ヶ岳登山の花道だった。当時は肩で風を切っていたのだがいまや見る影も無い。道標は朽ち、僅かに「長坂山岳会」の古い標識が草に傾いているのみ。下草は一面の笹。「笹すべり」の地名もうなずける。

早乙女展望台から傾斜はゆるくなり道幅も太くなる。水場の記号が地図にあったが今は使えないそうだ(野生動物の利用程度で生水は不適の看板有)やがて八ヶ岳神社の分岐を過ぎると見違えるほどのいい道になる。きっと、村の氏子が下草刈りをしているのだろう。年に何度か村中で神社の道を手入れする風習は全国にある。終わると夕方子供も加わり皆で集まってうまい酒を飲む。お祭りに匹敵する村落共同体の原風景だ。都会の私達が忘れた住民全員の気持ちの良い楽しいレクレーションでもある。

 そろそろ休憩かと思っていたら舗装道路に出た。天気には恵まれ、大きな事故も無く、予定通りの行程を見事にこなした充実感が爽やかに残った。

 それにしても八ヶ岳は侮れない大きな山である。編笠、権現などと決して軽く見てはいけない。

 紘正リーダーの発案で帰りはタクシーで「井筒屋」に横付け。ビールと旨いうなぎの昼食。

 ここから徒歩3分で小淵沢の駅。山から下りるとともかく街は暑い。ムチャクチャ暑い。また山に戻りたいくらいだ。その元気さえあれば。

 すでに買ってあった特急券を伊久枝さんと昭さんのネバリで急遽変更して窓口で繰上げ、炎暑に青黒く霞む甲府の山々を横目にしての指定席の冷房が快適だ。帰りはこれに限る。

  • 日時:2006年8月3日-4日
  • 参加者
    孝儀、勝巳、才美、伊久枝、紘正、昭、以上計6名
  • コースタイム(着/発)
    • 【第1日】
      小淵沢駅(9:00)......(タクシー)......観音平(9:35)......雲海展望台(10:33)......押手川分岐(11:28)......食事(11:45/12:10)......編笠山(13:20/13:45)......青年小屋(14:10/14:25)......乙女の水(14:30/14:35)......西岳(15:30/15:40)......青年小屋(17:00)(泊)
    • 【第2日】(晴天、風なし、気温高め、前夜小屋はガラガラ快適睡眠、水1.5L以上) 朝食(5:40)......青年小屋(6:10)......狼煙場(6:40)......権現小屋(7:30)......権現岳山頂(7:40)......(大休止)......三ツ頭(8:30......天女山分岐(8:40)......木戸口公園(9:50)......ヘリポート(10:00)......延命水(飲めない水場)(10:50/昼食/11:10)......林道(鐘掛け松)(11:45)......八ヶ岳公園道路(12:00)......(タクシー)......小淵沢・井筒屋(12:30/昼食/13:20)......(徒歩)......小淵沢駅(解散/14:39あずさ122号)......八王子駅(16:00)

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このページは、akirafが2006年8月10日 09:37に書いたブログ記事です。

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